ハイキュー‼︎第260話「必死」

先週はリセットの視点を見失った山口の、久しぶりにヒヤヒヤした展開で引き。今週は回想から。先週、滝ノ上さんが嶋田さんの不在に気付いたようなコマがあったから嶋田さんが何かしてくれるのかも?!と予想していたんだけど…山口の集中が途切れたままサーブの笛が鳴り、どうなるどうなる?!といったところで、誘導灯まで「必死」に走った嶋田さんが嶋田マートの袋を掲げている姿が山口の視界に入る。そして見事アランくんを崩してサービスエース。もうここの熱さが半端じゃない。まず、先週の引き時点では「嶋田さんが鬼田女学院の旗を退かしに行くのだろうか」とも思ったんだけど、そうではなくて普段練習で使用していたレジ袋を使ったという点。ここが本当に好き!まず、誘導灯をルーティンのひとつとして使うっていうのは完全に山口の都合なわけで鬼田女学院の選手たちには何も関係なくて、仮に旗を退かしてくれと言われても退かす義務なんてないしね。そこで使ったのがレジ袋で、普段の練習から使っていたものなんだよね。だからそれを見てふっと集中のモードに入れる、っていうのはめちゃくちゃ納得できる。山口の集中を表現する方法として、嶋田さんが視界に入ってから、それまでやかましく山口の耳に入っていた周囲の雑音がふっとなくなるっていうのがよかった。集中してる時は周囲の音が聞こえない、というのはよくわかる感覚。「役名に恥じぬ働きです」という実況の言葉も熱い!梟谷の2人とか例のカップルが声にならない声を上げている様子なんかもいい。そしてまたいいのが、木下が「すっげぇな」と言いながら拳を固く握るシーン。自陣の得点や仲間の活躍への喜び、同じピンチサーバーとしての共感や敬意みたいなものがありながら、自分も…!という悔しさみたいなものも滲んでる。


しかし2本目のサーブはしっかり攻撃に繋げられてしまう。山口が弾いたボールを田中が追う。影山もしっかり追ってる。「今のは無理だって」という外野の声とのギャップがまたいいよねー。そして同じく外野の美華の「途中で取れないと思わないのかな?」という問いに対して大将が「頭の中にあるのはボールがまだ落ちてないって事だけなんだと思うよ」「諦めている隙?余裕が多分無い」と答える。ここのシーンが本当に良かった。今のは無理だって、というあの男の子とか美華が完全にコートの外側の人間であるのに対して、大将はコートの中での感覚というのを知っていて、まだそれを持ってる。「多分」「思うよ」など、主観的な思いではなくてあくまで想像、というような話し方をしてはいるんだけど、絶対にその感覚を身を以て分かってるんだよね。そしてやっぱり思い出すのが戸美の最後の試合で、ボールを追ってケガをした夜久さんに対して「深追いしすぎたね」と言った大将が、試合の最後には自分のコートの後ろに落ちるボールを観客を掻き分けて追って行ったあのシーン。その時の自分について自覚的であるかは分からないけど、彼もまた間違いなくその感覚を持った選手である、それは今もなお、ということがよく分かる。


印象的だったのは、スガさんが「チャンスは居る」という表現を使ったシーン。普通は多分「ある」。スガさんはその後に「逃(に)がすな」という言葉を使ってるんだけど、【にがす】の方が「既に捕らえたものを放す」、【のがす】は「まだ手中にないものを捕らえ損なう」イメージっぽい。スガさんの発言としては「チャンスが見えてきたぞ」というよりは「チャンスはもう手の中に握られてる、離す(放す)なよ」という感じかな。つまりは、勝つチャンス、点を取るチャンスがこれからあるぞ、ではなくて、噛み砕けば「今がチャンス」というようなところなのかな。


稲荷崎ピンチサーバー。スタメンじゃないけど当たり前に超強力なジャンプサーブ。大地さんが弾いたボールを、今度は影山が追って走る。テレビで試合とか見てると、このネットを潜ってボールを追うシーンというのはわりと見るかなと思うんだけど、結構細かくルールが定められている様子。こういうのって、普段の練習ではやっぱり意識しないことだし、どんな風にどのタイミングで学ぶんだろうかって素朴な疑問。まぁ影山はあらゆるルールを網羅してそうな感じある。コート外からボールを上げる、影山の顔アップのコマは、椿原戦234話の「ドンピシャ」と同じく、立体的にコートを解析するレーザーのような背景。つまり影山は、ただ自コートに返す、ボールを繋ぐというだけではなくて、次の攻撃についてもよく考えているということだと思う。このボールを上げる時にもボールの軌道がアンテナとネット端の間を通っていなければならない、というようなルールをどこかで見かけたんですけど本当かな。だとしたら大地さんかな。それでも大地さんも、とりあえず影山の上げたボールを稲荷崎コートに返すというだけではなくてしっかり助走に入っている様子で、それもまたいい。そして走ってコートに戻る影山、嶋田さん、声を上げるベンチのメンバーを背景に、美華の「諦めてる余裕はない」という言葉が入る。大将の言葉を受けて、今実感として烏野のプレーを見てその言葉を口に出すというのが熱い。


点数的にももうそろそろといったところで、来週がまた気になる。この「いけそう感」もまた怖い。でもここ一本取ってほしいな〜〜