2024年2月の読書記録

2023下半期芥川賞受賞作および候補作をいくつか読みました。『猿の戴冠式』がいちばんお気に入り。小砂川チトは『家庭用安心坑夫』がほんとうにむずかしくて何もわからなかったので。でも芥川賞候補作はわからなさを楽しむために読んでいるみたいなところもあります。

 

 

『悪なき殺人』、悪なきってことはなかった。それぞれの孤独や歪みやエゴが連鎖する。

 

 

そして『フランクフルトへの乗客』をもってクリスティ全作品読了。長かった、と一度思ったけど、クリスティが半世紀以上をかけて書いたものを2年で読み切ってしまったのはなんかよくなかったかもしれない、みたいな複雑な心境に今はなっています。有名作や人気作、シリーズものから読んでいったので後半の方に長い作品やあまり読まれていない作品が残ったが、基本的にはほとんどの作品がおもしろかったです。ただ最後に読んだ『フランクフルトへの乗客』がかなり厳しく、ページを捲る手が何度か止まりつつ。クリスティは『ビッグ4』がどうしてしまったのというくらいおもしろく読めなくてワーストかなと思っていたのですが、こちらも負けずという感じでした。どちらも、クリスティを読んだことのない人がいきなり手に取ることは恐らくないし、ある程度好きな人しか辿りつかないだろうと思うので、まあこういうこもあるよね、という感じです。おもしろくなかった本の話ばかりしてしまったが、本当に本当に、ほとんどの作品はおもしろいです。トリックでこれでもかと魅せてくれる作品も当然ありつつ、数十冊ほど読んだあたりで「パターン」みたいなものが見えてきてもそれでもおもしろいのは、シンプルにストーリーテリングのうまさだなと思う。殺人事件を読むのではなく、殺人事件の起きた人生を読む、殺人事件の起きた人間関係を読む、というところが飽きなさのポイントかもしれない。