ハイキュー‼︎第276話「仕掛ける」

真っ黒に塗りつぶされた背景と西谷、宮侑。無音。稲荷崎応援団もしんと静まり返り、実況解説の言葉だけが響く。もうこのページのかっこよさがたまらない。最終セットの緊張感とかそれ以前に、きっとこの一本のことだけを考えているであろう宮侑と西谷の醸すヒリヒリした感じ。宮侑が放ったサーブはコート後方、ライン上ギリギリで変化し、烏野コートに落ちる。沸き立つ稲荷崎応援席。ここまでのシーンで表現されるのは、実況解説の声と宮侑の手がボールを叩く音、確信めいた一瞬の判断を叫ぶ大地さんの声のみ。当然体育館に響く音はこの試合から発せられるものだけではないので、体育館が静まり返るということはきっとないんだと思うけど、こういう緊張感の演出はやっぱり漫画だから選べる方法であって、いい嘘だなと思う。先生は以前、漫画にも音が付いていたら最強なのに、とおっしゃってたけど、ハイキューには音もあるよなぁとめちゃくちゃ思う。試合中の騒がしさを画面からすごく感じるもん。更に対照的に、今週の冒頭だとか、試合の最後の最後どちらかのコートにボールが落ちて笛の音が鳴るまでの時間だとか、そういう「音がない」演出も含めて。


北くんによる解説。「ここでジャンフロを続ける意味」としてめちゃくちゃ丁寧かつ理論立てて説明されてる。バレーで食べていくわけじゃないと言っていたけど、こういうのを見ていると、指導者にも向いているんだろうなとか思う。バレーに関わって生きていくということは、何もトップレベルに身を置いて自分自身がバレーをやるということだけではないと思うし、そういうサプライズが見られたらいいなぁとかすごく思ってしまう。男子は高校卒業後にピークを迎える選手や、伸びていく選手もよくいると聞くし、彼らの今だけを見て「この子は将来バレーを続けていないだろう」とか「トップレベルでプレーすることはできないだろう」とは思いたくなくて、誰もが自分の眼前に全ての可能性を認めながら、自分のやりたいものを選び取って生きていってほしいと、夢みたいな話だけど思ってしまう。


宮侑サーブ2本目。ネットに当たったボールは西谷の前に落ちてくる。私はここで西谷が「こわいとおもっている」と独白したことがそれはもうめちゃくちゃに意外だった。「こわい」のか、ということもそうだし、彼が自分から一歩距離をとって外側からそう表現することも。先週「Aパスじゃなくていいから高く」と求めた影山はコートに膝をついて2本目を上げる。それを2枚相手に頼もしく上げていく旭さんの有言実行っぷりがかっこいい。


そして今週大活躍の客席。美華の「優クン玄人語りしてもいいんですよ?」がめっちゃくちゃかわいい。そしてローテーション解説。今まではローテーションそれ自体の説明っていうのはあまりされてこなかったらしい(展開に応じて"今のローテは…"というように語られることはあった)。意外。大将が「意外と試行錯誤してくるタイプ」と烏野について語っているのになんだかぐっときた。烏野に関しては、確かに以前からローテーションを「回す」という表現をよくコーチから聞いていた気がする。更に烏野はMBによって顔が変わるというのもIH予選あたりから既に言及されている気がする。あとは椿原戦なんかでも、日向が後衛に下がった時「やっと下がったね」なんて観客に言われていた時椿原セッターだけが月島が前衛に上がってきたのを嫌がっていたりだとか。そのローテによって穴と強みが表裏一体になっているような。個人的にはやっぱり梟谷贔屓なので梟谷のローテの意図が知りたい。東京合宿のvs烏野も東京予選のvs音駒も、梟谷は猿杙サーブスタートのS3。猿杙が際立ってビッグサーバーであるという描写は特にはないんだけど、あかねに「きょーれつジャンプサーブ!」と言われていたり、彼の強みの一つであるというのは伺える。あとはこのローテだと木兎さんが前衛レフトから始まるので、それを意図したものなのかなとか。あとは梟谷はセッターとエースが隣り合うんだよね。同じ大エースを擁する白鳥沢ではセッター対角が若利くん。このあたりの意図も知りたい。


そして語られる今回第3セットのローテの意図。月島に宮治と角名をより多くマッチアップさせる。あの月島が「ごめんね 君の大役奪っちゃった」なんて言ってるのすごいよね。「無難にしのぐのが僕の役目」と言っていた子が。


旭さん絶好調。治はツーアタック(というのかな?トスフェイント?)で欺きトスを上げる。こういうことが当然のように出来てしまうのやっぱりすごい。そしてローテのもう一つの意図。アランくんに対してチームNo.2の最高到達点を持つ影山をぶつける。どシャット!ワクワク顔の黒尾・大将がいい。あくまで悔しそうな月島もまたいい。ブロックの得点ってやっぱりテンション上がるよね。白鳥沢戦で見たような、我慢して耐えて耐えて積み重ねてじりじりと相手を追い詰めていく月島のブロックが気持ちいいのも事実だけど、シャットアウトできるとやっぱり気持ちいいというのもまた事実。烏野ブレイク。一歩リード。久々に気持ちいいセット開始だなぁ。どうあがいてもこれが最終セット。多分全観客にとって波乱の結果となる一試合。説得力のある勝利が見たい!烏野がんばれ。