2024年3月の読書記録

 

図書館や書店に行くと、ぎっしりと本を積んだ書架がずらりと並ぶ光景を見てときどき恐ろしくなることがあります。ここにある本は世界に存在する本のごく一部であるにもかかわらず、これだけの本でさえわたしはすべて読むことなく死ぬし、おそらく読みたいと思う本すら全ては読めずに死ぬ。そしてわたしの死んだ後にもどんどんおもしろい本が書かれつづける。恐ろしくなるとともに、読めなかった本をたくさん残したまま死ぬのはなんか、希望だなと真逆のことを思ったりもするので不思議だ。

アガサ・クリスティを全部読むというここ2年抱えていた目標を先月達成し、「クリスティ全部読めないまま死ぬ」を回避したことで読書欲が少し落ち着き、今月の読了数は6冊となりました。

 

 

綿矢りさ「パッキパキ北京」。単身赴任中の弱りきった夫に呼ばれ北京に赴く主人公・菖蒲。とにかく逞しく、自分の欲求に素直で、自由奔放で、自分勝手で、生命力に満ち溢れている。特に友達になりたくはないが、期限付きの知り合いにはなりたい。めちゃ好きになっちゃうと思う。でもこんなこと言う暗いやつを菖蒲は相手にしないと思う。それもいい。年上の稼ぐ夫を経済的に頼ってはいるのだが、堂々として何にも縛られず、思うままに軽やかに自分の人生を生きるそのさまには、確かにフェミニズムを感じる。

 

アンソニーホロヴィッツホーソーン&ホロヴィッツシリーズを最新刊まで読みました。ミステリーとしてすごく惹かれる感じはないのだが、謎に包まれたホーソーンという人物の正体についてはすごく気になっているので読み続けるとおもう。ときに差別的で粗暴であるし立場や状況がひとつ違えば探偵というよりも探偵に追求される側になってしまいそうな危うさがある一方で、譲れないこだわりや矜持みたいなものも持っていて、おまけにそれらが彼の過去に関わっていそう…というので、やはり嫌いになりきれない。

 

クリスティにはまってからわたしはミステリーが好きなのだろうかと思いちょこちょこ読んでいるが、今のところクリスティ以外でこれはいい!と思ったのがエラリークイーンくらいで、わたしはミステリーが好きというわけではないのかもしれない。まだわかりません。

 

 

バディものの探偵小説はどこかボーイズラブみがありがち。というのは雑な物言いかもしれないけれど。欠けた部分を補い合い、仲良しというわけでもないのに時折信頼や妙な絆を感じさせるようなところにわたしはそれを感じます。名のつかない関係性をボーイズラブという型に押し込める行為は嫌われがちだけど、男と女の関係性がすぐに恋愛に結びつけられがちなのに対して男と男のそれについては明らかなものでない限り恋愛の可能性を排除するという風潮が気に食わないので、わたしは広義のボーイズラブという言い方を積極的に採用して抵抗している。

といいつつも、特にこの探偵小説のこのバディのカップリングが推しであるというのは特にない。というか、わたしが好きなのは「BLカップリング」そのものではなく「そのBLカップリングの物語」なのではないかと最近思いつつあります。

 

最終的に全然違う話になってしまいました。おしまい。