ハイキュー‼︎第239話「味方」

 

先週の最後に登場した椿原のピンチサーバー、姫川葵のサーブからスタート。椿原の監督の「下手をやれば ただ 相手のチャンスボールになるだけ」「しかしやってみる価値はある」というモノローグから、烏野のセットポイントという局面で椿原もまた攻めた姿勢で戦略を取ってる。緊張を落ち着かせようと色々考えるんだけど、それが余計に緊張を招いている様子の姫川。で、アンダー・ハンド・サーブ。バレーボール界隈でこれがどれだけ使われているかっていうのは分からないんだけど、逆に経験者じゃない人の方が馴染み深いんじゃないかと思う。というのは、体育とか球技大会なんかでバレーボール経験者じゃない子(主に女子?)がやるサーブがこれなんじゃないかと思うんだよね。現に自分がそうだったから。なので、初見の驚きはある。え、素人サーブ?っていう。そして緊張から仲間の後頭部にヒットさせてしまって、烏野としてはラッキーなことにこれで1セット先取。「アレ多分一生夢に見るよ」。分かりすぎる。チームスポーツにおいて逃げることのできない試練のひとつなんだろうね。個人の失敗を責める子っていうのはまず出てこないし、サーブがそういうものである、それでこそ意義のあるものである、という高いレベルの共通認識をみんなが持っているから、まわりの子たちはちゃんと「わかってる」んだけど、それは「責任」とかそういったものを個人が感じなくなるという話ではない。なんだけど、椿原の子たちが自然と和んだ空気を作っているのがほんとうに素晴らしい。ちょっと泣けた。重い雰囲気を引きずったままでは良くないというのを経験的に知っているのかも。月岡が姫川ではなく他の選手にサーブの指摘をしていたのもよくって。「攻めたサーブは失敗しても価値があるし中途半端は点が入っても褒められたものではない」という認識がしっかり共有されているのもいい。

 

そして観客席。これが本当にいいよね。「ヘラヘラしてっからセット落とすんだよ」に対して、モブカップルの「分かってる感」がすごい。「深刻な顔したってミスは消えないし烏野の10番が止まるわけじゃない」「笑えない・会話もないってなったらもうほぼ負けるよねー」「なー」これ。良すぎるわー。もうおっしゃる通りですよね。バレーボールは失点前提のスポーツなんだよね。いくら失点したって、先に25点を先取した方の勝ち。そのバレーボールで、既に落としてしまった1セットのうちの最後の1失点を深刻に重く受け止めていたらすぐに持っていかれてしまう。この会話が若い年代のカップルと何世代か上のおじさんとによって行われているというのもまた意味を感じる。それにしてもこのカップル、本当に好きだわ。やっぱり何かスポーツやってるでしょ。「いい観客」すぎる。

 

そして今週一の癒しポイント。月島の声マネをするスガさん。「暖まったどころじゃないよ疲れたヨ」「菅原さん声マネやめて下さい」かわいい。スガさんが1年と距離を詰めているということが嬉しいし。強化合宿の後もスガさんは月島に絡んでいたりだとか、彼のペースに飲まれるようになってきた月島も愛しい。そして烏野のミーティングにカメラが入っているのが、うわ〜その映像買わせてくれ〜〜ってすごい思う。あとすごく良かったのが、先週ちょっと気になっていた西谷の2段を反省している場面が入ったこと。そして久しぶりに伊達工。「サイドにちゃんと2枚ついていってる」ことを二口に評価させるあたり、椿原のすごさに説得力を持たせてるよね。「あの」伊達工が言ってる、っていう。

 

そして2セット目も中盤。再びピンチサーバーで姫川を投入。姫川を鼓舞する椿原の監督の言葉が素晴らしい。「ピンチサーバーというのはロウリスクハイリターンである」と。ミスをしたってその1点は取り返せばいいだけだし、チームの連中は失敗を責めない。しかし決めればそれはヒーローになれる1点になる。「美味しいトコ取り」して来いよ、と。で、当然読んでて違和感があるんだよねー。ロウリスクなわけがないので。ミスをしても椿原の子たちは責めない、それは本当。でも責める責めないの話ではなく。チームが総力でもぎ取った1点と、ピンチサーバーの失う1点は同じ1点。自分の失点はみんなの失点になってしまう。さらに言えば、サーブによる失点が相手に勢いを与えてしまうこともある。リスクがないなんてことはない。で、その1p後に椿原の監督自らがそう否定してるんだよね。既に独特の空気が出来上がっているコート。最もメンタルのコントロールが難しいサーブというプレー。そしてミスを許さないのは、何より自分であると。何もかも分かっていながら美味しいトコ取りしてきなさいよ、と明るく送り出す監督が本当に素晴らしすぎる。緊張した姫川に寄り添った言葉を投げかけてくれるのがいいよね。優しい嘘というか。しっかり大人として、選手1人1人を見て、必要な言葉をくれる。いいなぁ本当に。

 

そしてアンダー・ハンド・サーブの正体。天井サーブ。まず作画がかっこいい。この「天井サーブ」、大佐渡監督が言っている通り「現代では使われることは少なく、慣れている人も少ない」「烏野はこの天井に慣れていない」これが合わさった時にのみ効力を発揮する。月岡の「次からは俺が出る」という発言の真意はこれか。つまり、次勝ち上がってから当たる相手はこの体育館で試合をした経験があって慣れている、或いは初戦で既に慣れているから天井サーブは意味をなさない。初戦、天井に慣れていない烏野、という条件ではじめて姫川の天井サーブが効力を持つ。これはグッとくる。勝ち上がってほしいという気持ちにもなってしまう。昔、サーブをオーバーで取っちゃいけないっていうルールがあった時代に最も栄えたサーブで、今はそのルールがなくなったからほとんど見られなくなった(オーバーでわりと容易に取れてしまう場合が多いのかな)らしいんだけど、高校生の彼らがバレーボールを始めてからはルール改正の影響でほとんど見られなくなった天井サーブが、今、彼らの武器になっているということが、ちょっとエモい。そして試合が始まる際に「最初の敵」とされた体育館の問題が今も顕在であるどころか、今椿原の味方になっているというのが面白い。

 

今週は特に面白かった。もう完全に姫川のことが好きになってるもんね。来週も彼の活躍と、烏野の対応に期待。