ハイキュー‼︎第229話「前日」

カレンダーは既に1月。朝目覚めた大地さんが部活に向かおうと靴を履いていると、母親から「試合なら昨日全部終わったでしょ」と告げられる。読んでいる方はここで「ああ、夢か」と気づくわけなんだけど、それでもヒヤッとした。急いで携帯の電話帳を開くも、スガさんの名前も旭さんの名前も(潔子さんの名前も)ない。体育館に行くと、黒川さんと田代さん。「ここはバスケ部の体育館だぞ」「他って誰の事?」「バレー部はお前一人だろ」そこで目覚め、夢だと気付く。分かっていても、読んでいて怖かった。夢の中の大地さんは1年生の時の11番ユニを着ていて黒川さんと田代さんがいることから、1年生の時、どんなに努力をしても、強い志を持っていても何か大きなものに足を取られて先へ進めないような感覚が彼の中で今も強く残っているのだということがよく分かる。大地さんの夢が描かれるのが、これで2度目なんだよね。1度目は宮城県決勝の前日で、夢とは言っても1年生の時の回想で、現実のものが思い出された形。普段主将然として、全く弱みを見せない人だから、このように2回も、夢という形で彼の弱い部分が描写されたというのはすごく意味があるよね・・・。夢には無意識のものが現れるというし、彼は普段悩みや苦しみを口にしないけど、自分でも気づいていない無意識の領域でこういったトラウマのようなものを抱えてる。
 
そして朝。元旦の早朝から受験勉強に励んでいるのもまた。受験生を経験した身からするとすごく苦しくなる。今朝見た夢と春高への思いから勉強に身が入らず、初詣の約束に30分早く来てしまう。旭さんとスガさんもまた同じ。大地さんの私服がパパっぽいいい感じのダサさで安心したw旭さんはJKみたいなお団子で、パーカーのインナーにシャツ、そしてチェスターコート。めっちゃオシャレ。イメージ通りすぎる。スガさんのダッフルコートにボリューミーなマフラーもかわいい。そして20分後に潔子さんが到着。Pコートにロングスカート、スニーカー、リュック。めっちゃかわいいな…。スニーカーというのがいい。3年生4人で初詣。スガさんの発言から、4人でくるのは初めてというのがわかる。これはエモい。普通に泣きそう。スガさんがいつものように冗談飛ばすんだけど反応なしで「おい いい加減にしろよ!?」って逆ギレしてるのめちゃくちゃかわいい。何やこれ。かわいすぎる。「違うお前が落ち着けスガ!」と言う大地さんもよく分からんし旭さんに至っては呼吸で精一杯かよと言われていたりして。大地さんの今朝のような思いを全員が大なり小なり抱えているのかな。
 
潔子さんに近付いてくる男の子たちを普通に睨む大地さんと、おみくじの結果を気にしていたらたまたま怖い顔になってたまたま拳を握りしめているみたいになってしまった旭さんに笑った。試合のことから将来のこと、隣の家の老犬のことまで神様にお祈りしてしまう旭さん。笑えるけど優しくて彼らしいな。神様にお願いしても試合に勝たせてもらえるわけじゃないと呟く潔子さん。「神様の助けがなくても大丈夫よ」これはかっこいいわ。美しいと言うよりかっこいいと感じた。田中風に言うと「女神!」って感じのコマなんだけど、そうではなくて、3年間ずっと近くで見てきた彼女がその努力を何よりの根拠として「大丈夫」と言ってくれてる。女神さまの心強いありがたいお言葉、ではなくて、ただの仲間がただ事実を言ってるだけ、みたいな。その後の微笑みもかわいかった。
 
そして影山。元旦からトレーニング。流石。トレーニングウェアがめちゃくちゃかわいい。携帯を持ち歩いてるのすごい意外。「山口と初詣兼必勝祈願行くけど来るかよ?」で、既に月島には断られたんだろうなと察するw日向と山口という組み合わせ和むよね。普通に友達なんだろうなって感じ。即レスで行かないと返す影山には笑った。ブレない。酒を飲んだ姉に絡まれる田中とか、おじいちゃんと羽子板してる西谷。おじいちゃんめっちゃ元気。さすが西谷の祖父。月島はというと、実家に帰ってきてお酒飲んで絡みに行く兄と、ガン無視の弟。
 
そして大地さん。夢だと分かっていても気になってしまって学校へ。すると羽子板で勝負してる日向、影山、田中、西谷。ランニング途中で何となく学校に寄った影山めっちゃかわいくないですか。OFFなんだからしっかり休めと全員を引きずる大地さん。かわいい。みんな赤ちゃん。大地さんもまた、「コートがバスケ部に乗っ取られていないか見に来たんだ!」とみんなには意味不明なことを言っているのがいいよねー。このシーンでも「主将として」後輩を引きずってってるわけなんだけど、ちょっとだけぽろっと素の部分がこぼれてる感じ。立場が人を作るという言葉があるけど、大地さんに関してはそれが大きいんじゃないかなぁ。好き勝手してる部員にあれこれ言ってまとめる立場をとることで通常運転に戻っていける人なのかも。そして帰路、池尻に会う。これは胸熱。決勝テレビで見てたよっていうのが、あぁそうだよな、って妙に感慨深い。素直に緊張してると零す大地さんに対して池尻の掛ける言葉がすごくいい。「プレッシャーなんか感じる事ない 気楽に頑張って来いよ ーなんつってな ちょう期待してっからな澤村…!念送ってるからな…‼︎皆がお前らを見ているぞ…‼︎」プレッシャーは感じて当然。IH予選で池尻の言った「勝てよ 俺達の分も」という言葉と本質は同じ。勝者に敗者の思いやなんかを乗せるのは身勝手なことかもしれないし「あいつらの分まで頑張る」なんて感じる必要は全くないと思うけど、お前が負かしていった全ての敗者がお前を「見ている」という言葉の裏には、大地さんの言ったような「1人なワケない」というのがあって。気楽にやれよ、とかプレッシャー感じるなよ、なんて言われるよりも、ずっと力になる。池尻だからこそ言えた言葉だよね。それに大地さんも池尻だからこう素直に緊張してるって本音を言えたんだろうなー。朝起きた時に鳴っていた犬の鳴き声のアラームと対応して、池尻の隣で犬がワンワンと鳴いているのもいいよね。夢はここで終わり。
 
そして前日、朝。ついに。春高前日譚として大地さん目線で1話使われたのってすごいなと思う。大地さんの、そして3年生の春高だなと思う。主人公は日向だけど、「春高」という固有名詞に強い思い入れを持ち、「春高」の主人公であるのは大地さんを代表とした3年生、っていうのはわかる感覚。ついに、彼らにとって最初で最後の春高。夢は覚め、現実に。がんばれ。緊張。