ハイキュー‼︎第319話「ガーディアンズ」

どちらかは負けるし引退する、疲労もプレッシャーも尋常じゃない。そこに「さあ最高のバレーボールをしよう」と続くのがあまりに強くてかっこよくて、1p目から泣いてしまう。このセットが終わればどちらかは試合に負け引退すると読者も彼らも少なからず意識してしまう中で、烏野とバレーボールと音駒とをぐるっと1つにくくった「最高のバレーボールをしよう」という言葉の大きさにハッとした。ぐるぐると頭の中をめぐる勝敗や引退という未来のことや緊張や、今その身体に感じている重みって、決して無視しきれるものではない。だけどそこからただ目の前の試合に向かう選手として、試合の中で最高のパフォーマンスを目指すこと、試合を競技をを楽しむこと、ってスポーツの本質的ともいえる部分にさっと気持ちを持っていける強さが凄まじい。

 

 

そして今週、1話を通して続くバレーボール表現にただただ圧倒される。隣のコートの音とか会場のアナウンスとか応援の声や演奏でやかましい体育館でパッと自分の世界に入って「集中」する瞬間の描き方が特に印象的だった。2本目の影山のサーブを上げた海さんを映した後に犬岡くんの表情を描くところもすごく良かった。



日向がリバウンドで仕切り直してもう1回、かと思えば囮!とか、研磨の「かんぺき」が影山のトスへの純粋な賞賛かと思いきや、日向に抜いてほしい「道」を抜いてもらうために日向に上がるトスとして「かんぺき」に綺麗なトス、という意味であること、というような騙された!っていう感覚も読んでいてすごく気持ちいい。



西谷の「スパイカーへの配慮」、影山がユース合宿で気付きを得て、それを伝えるためのコミュニケーションに関して苦戦したりそして学んで成長したりだとか、それを受け取る方の西谷も元々すごくレベルの高い選手であったところから影山に引っ張り上げられることでもうひと回り大きくなって、という過程を全て見ているからこそ、実況解説の言葉にはすごくじんわりきた。烏野における影山の存在がいかに大きいか、どれだけチームを引っ張りあげる可能性を持つかということがすごくすごく分かるし、きっとそういう選手がただチームにいるだけで何もかも好転するとは限らなくて、相手の話を聞きそして自分も主張する、っていうことが当たり前に実現できるチームでなければできないことなんだなと改めて感じる。そしてそして、こんな実況解説、いいよなあ〜!!!笑 聞きたいところで聞きたいこと(それ以上のこと)を教えてくれる。先生の実況解説者へ託したいものの大きさをすごく感じる。



そしてその2人を見つめる芝山くんのモノローグが黒尾と月島に繋がっていく美しさにやられてしまった。敵同士なのにどうして教えてくれるんですか?と尋ねた月島に、黒尾は「ゴミ捨て場の決戦を実現したい」と答えた。そしてそのゴミ捨て場の決戦が実現した今向かい合った2人に「互いが互いの"師"」という言葉があてられるの、すごいよね。2人の話として何が見られるのか、本当にただただ楽しみ。



泣いても笑ってもこれが最後。私はずっとずっと烏野の勝利に向かう物語だと思ってハイキューを読んでいるんだけど、この試合は初めてというくらいに本当に両方に勝ってほしいってすごくすごく思ってしまう。だけど勝者と敗者を決めるのが試合というもので、終わりがあるからきっとこんなに楽しい。こんなことを言うのはあれなんだけど、私は黒尾が勝つのを、音駒が勝つのを見たいと思うと同時に、研磨が負けた時に何か思うことがあるとしたら、やはりそれが知りたいし見たいともすごく思ってしまう。



じんわり染みる1話であると共に、バレーボールを漫画で描くことの面白さをすごく感じる1話でした。