ハイキュー‼︎第320話「師弟・2」

夏合宿。3コマ目の多幸感がすごい。かわいい。木兎さんすごい前髪長いんだな〜〜。黒尾はどうにかこの髪型まで持っていけるならあのいつもの寝癖ヘアもどうにかなりそうでは?笑



黒尾の教えを思い浮かべながら、"上に跳べ"と呟く月島にジーンと来てしまう。シャットアウトを狙ったブロック(今回は音駒の守備力の高さもあってボールは落ちなかった)やワンタッチ、避けて打とうと思わされてしまうほどのブロックとしての圧、ネット上にボールが上がった時の空中での攻防、というようにこの一連のプレーの中でブロッカーの動きとしてあらゆるものを見せていて、すごく面白い。一旦引いてから相手が押し切ろうとしてきたところを押す、っていう空中戦での一瞬のボールの扱いのうまさっていうのはやっぱり黒尾だね。



黒尾鉄朗のブロック論。読んでいる身からすれば、黒尾の貫くリードブロックが非常に理想的なブロックの在り方であることも、古舘先生自身そう信じて描いているのだろうということも、すごくすごく分かる。そして実際月島がどこまでもリードブロックを貫きフロアディフェンスと連携する戦い方で白鳥沢戦(そしてそれ以降)を勝ち抜いてきたのを見てもいるし、リードブロックが大変理想的でありながら、多くの場面において最も有効な戦い方であるということも知っている。「漫画」を読んでいる身としてはそう。だけど、この世界で生きる彼ら、黒尾にとっては勿論そうではない。本当にこれでいいのか、もっといい方法があるのではないかと迷うことが絶対にあったはずで、そこにメタ的な「正解」は存在しない。ゲスブロックや本能や勘で大盛り上がりの1点を取る選手を見ながら、自分だってこの目の前の1点が取れたんじゃないかとか、そんなことを考えることもあるかもしれない。それでも自分の信じるリードブロックの在り方を貫き続けた。そうしていたら、自分の信じるやり方についてくる奴が現れた。つい先ほどまで「タダノブカツ君」であった他校の1年。



黒尾が月島に技術を教え続けた理由なんて、「ゴミ捨て場の決戦を実現したいから」だとか、さらに言えば「ボクが優しいのはいつもの事です」でめちゃめちゃ説明はついているし、当時の黒尾の「理由」はやはり「ゴミ捨て場の決戦を実現したい」なんだろうと思う。その上で、黒尾がそうやって月島を育ててゴミ捨て場の決戦が実現した今、「黒尾自身の理由」がついたのが本当に嬉しかった。黒尾は最初から自分のブロックの証明のために月島に教えていたわけではなくて、今ゴミ捨て場の決戦が実現したからこそ初めて出てくる言葉であり気付きだったんだろうと思う。



月島のブロックの中には黒尾の3年間(あるいはそれ以上)のブロッカー人生が存在し続ける。月島が強くなる度、勝つ度、黒尾のブロックは肯定されその正しさを証明される。「導」の回を読むまで私が第3体育館(正確には「タダノブカツ君」に立ち会った子たち)における月島に見出していたものもこれと似ていて、彼らが改めて言葉にしなくても月島のブロックそれ自体にあの夏の全てが詰まっている、例えこの先二度と彼らの人生が交わることがなくても、っていうのがもう好きで好きで。特別何か描かれなくても月島が強くなり勝っていくこと、更にはそれを黒尾や木兎さんや赤葦が目撃しているというのがこれ以上なく嬉しいと思っていて、そして「導」ではそれを更に超えていく本当に宝物みたいな話を見せてもらったんだけど、今週ついに、「月島の中に存在する自分」というのを黒尾自身が言葉にする。こんなの見る日が来るなんて思いますか…。



そしてもう1人の弟子、リエーフ。彼ははじめはリードブロックの対極にいるような存在であったし、好きじゃないなとかもっとこうしたいなって思ったことは相当、相当あっただろうなと思う。というか、あったよね。黒尾から言葉として「リードブロック論」を受け取る機会も多かったはずで、いつも1番近くで見てもいて、そのリエーフがついに。理屈ではなく自分のプレーそのものできっかけを掴むのもまた彼らしい。黒尾のブロックはリエーフの中にもまた存在し、そして音駒というチームで価値を証明し続ける。



いつか負けることを恐れてなかなか踏み出すことのできなかった月島が今、黒尾のレシーブを見て「ああクソ 勝てない」と、嬉しいみたいなワクワクするみたいなそんな表情を浮かべ、独白する。こんなのすごすぎる。白鳥沢戦で「ハマって」スタートラインに立ったばかりの月島はまだ高校1年生で、レシーブもサーブも攻撃も、まだまだ課題はたくさんある。そのことを実感する月島がこんなに嬉しそうな顔をしていることが、嬉しくてたまらない。



そして「勝てない」だけでは終わらず、「ネット際」のプレーにはプライドを持っていることも、そのプライドが自分だけではなく「チームの中の自分」にあることがまた嬉しかった。師匠である3年生にはまだまだ叶わない、だけどネット際なら戦えるかもしれない、「仲間である影山のトスで」。と続くのがも〜〜〜〜すごいんだよ。最後の笑顔で涙が止まらない。試合の中でこんなふうに笑う月島を見る日が来るとは。すごいものを読んでいるなあと本当に本当に思います。



この回のすぐ後に「師弟」「導」を読み、またまた泣いてしまった。最高の1話でした。