ハイキュー‼︎第305話「1歩進んで2歩ダッシュ」

冒頭、研磨と黒尾の幼少期回想が目に入った瞬間ドキーッとしてしまった。設定としては勿論十分分かっているんだけど、研磨と黒尾の幼少期のエピソードが改めて語られるたび、ほんとに小さい頃からずっと一緒だったんだなあと妙にじんわり来ちゃう。多分特に遊ぶ約束をしてるわけではなくて、突然来てゲームやったりとか日常茶飯事なんだなとか、研磨の言葉を特に気にも留めない感じとか。この距離感の自然さにやられてしまう。


「ゲームオーバーよりゲームクリアの方が悲しい」は、めっちゃわかる。これに関しては煽り文がいい仕事しすぎてて何も言うことない!笑 黒尾はゲームクリアの嬉しさや喜びや達成感が好きで、研磨とは逆、というのも分かるよねー。研磨はクリアという結果に向かっていく「過程」が面白いからやっている、だからクリアして終わってしまうことが悲しい。黒尾にとってはクリアという「結果」にたどり着くための手段が過程をがんばること、なので、クリアというゴールにたどり着いた時が何より嬉しい。


実況者がやっぱりいいよねーほんとに。「格上」の烏野に「挑む」音駒という図、雰囲気は確実にあった。「ウシワカ」「宮兄弟」を倒してきた、というような非常に目を惹く文言が使われているように、強い相手を倒してきた烏野の強さってすごくわかりやすい。ウシワカ擁する白鳥沢を倒してきたってことはウシワカより強いってことでしょ、って単純に取りやすいから。だからこそ、その結びが「波乱か 順当か」になるのがまたいい。ここで初めてイーブンになる感じ。どうやらこの試合は「格上」烏野の独擅場ということではないらしいぞと知らしめたのが第1セット。今まで「挑む」側であることが多かった、そしてその立場から強大な相手をたくさん倒してきた烏野がこの試合では「待ち受ける」烏野として序盤描かれていた。それって烏野の戦績を見てもそうだけど、きっとそもそも音駒のスタイルがそうなんだよね。待ち受ける相手をじりじりと取り囲み、追いこんでいく。そうして気付いたら自陣優勢の流れに持ち込んでいる。そうやって1セット先取したことで、最初にあった「格上」烏野に対して音駒はどこまで食いつけるかな?という、烏野の勝利という結末を前提とした空気がここで初めて、シーソーはどちらにも傾く可能性がある、というように変わる。


そして「ウシワカを倒した烏野」という文言にツッコミが入ったのがまたいい〜〜。非常にセンセーショナルで目を惹く表現だし、大衆が食いつきやすい言い方なんだろうなと思う。だけど本当はきっと、烏野は若利くんのことを倒しきれなかった。それが「身内」の天童から言及されるという嫌味のなさ!そして「では倒されたのは誰か」と考えた時に感じてしまう、ほんの少しの寂しさと苦しさ。


コートチェンジ時に日向にレシーブについて話を持ち掛ける研磨、どこまで考えてやってるのかなあ。と、やっぱり研磨の場合考えてしまう。上達したという自負もすごくある日向はレシーブのことを褒められるのはやっぱり特別嬉しいだろうし、普段はなかなか褒めてくれない研磨が、っていうのもさらにまた……っていうところに研磨が思い当たっていないはずがないとやっぱり思っちゃう。


烏野のミーティングが選手たちだけで完成するようになってきたことにすごく感動してしまった。自分たちで相手への対処法を考え、意見交換し合えるくらいに経験を積んできたんだなということとか、選手たちが指示を受けなくてもコーチの考えを正しく共有できていることだとか。ただ「日向ばっか」狙ってくるワケじゃないという前提のもと、「日向しか取れない位置じゃない限りは」西谷が取る、というところに留まったのはこれどうなんだろう…… 確かに日向ばっかってわけでもないのかな、大地さんが「黒尾のサーブ」について改めて言及しているように。


対して音駒ミーティングでは、「サーブで取れる人は取って」、そしてそうでない人はというと、「翔陽が10点取るうちの2・3点を削る」に繋がるサーブを、というのが改めて共有されている。烏野が「日向ばっか狙ってくるわけじゃない」=10回中8回も9回も日向を狙い牽制してくるわけではないのなら許容範囲、として対策を講じているのに対して、音駒はそもそも、日向を牽制することで10回のうちの2・3回でも日向の得点を制限できれば十分、としてるところが面白い。日向の得点を10点のうち2点・3点でも削ることができれば、単純に計算しても1セットでは6点・7点分になる。…と考えるとかなり大きいし、音駒にとってもそれだけ日向の取る点が大きいということでもある。


そして第2セット。東京予選で音駒と戦った戸美・梟谷の彼らの「キツイ」「しんどい」という言葉の重さだよなあ〜〜… 木兎さんは先週から本当に独特の反応してる。笑 木兎さんっぽい反応だし分かるなあ、と思うんだけどそこに至るまでの思考回路が何一つ理解も共感もできなくて、先週もコネコネ考えてみたりもしたけど、単純に逆境に燃えるタイプってことなのかな〜〜。自分がコートにいてもそれはそうなんだろうけど、相手の強さどうこうには凹まなくても木兎さんの場合自分のメンタルや調子の波によってはしょぼくれて使い物にならなくなってしまう(そしてそういう自分に自覚的だからこそ田中の時にあそこまで喰らってしまった)、ただそういう問題から解放されている時に関しては、相手の強さも自分のピンチも逆境も追い風にできちゃう人ではあるんだろうな。


音駒はS2スタート。このローテーションを表す「Sナントカ」という表現は、以前バレーのルール等を調べていた時に知って便利でわかりやすいしカッコイイなと思って自分もこっそりカッコつけて使っていたりもしたんだけど、ついに本編でも。細かな反則のルールだとか、頻繁に使われる用語みたいなものが出てくるとやっぱりテンション上がる。で、音駒「S2」ローテの意図っていうのはコーチの言っている「日向狙いのサーバーを増やしてきた」ってことなのかな。日向が前衛にいる間、音駒のサーバーは皆日向狙いのサーブ(福永/研磨/リエーフ)。


前に出てレシーブして助走に下がって、は無理がある。「じゃあ前」と続くのがま〜〜日向の嫌なところだね!笑 相手の作戦に乗っかって「レシーブ入らないようにするには?」「助走に下がれるようにするには?」「このリズムで攻撃に入るには?」という方向でこの局面を打開してくるのではなくて、相手の作戦において「前提」としているところをフラッと避けての「前」。烏野の1点。コートを駆ける日向の笑顔の眩しさに胸がギュ〜っとなる。これって他のスパイカーの邪魔になったりはしないのかな、あとはやっぱりハッタリの側面もあるから2回目以降もこう気持ちよく決まるのかな、というのは少し気になる。


そして最後の研磨。ぞくっとした。禍々しくて、一切の温度を感じられないひんやりとした感じ。それなのに「人間のように」汗を垂らしているのがまた不気味。ゲームオーバーよりゲームクリアの方が悲しいという研磨は、簡単にはクリアさせてくれない日向のことがおもしろくて、だからクリアしたくて攻略したくて何より夢中になる。面白いままでいてね、俺にクリアされないでねと笑いながら、このゲームをクリアすべく、一歩一歩着々と攻略の手を進めている。ほんとにこわいね。研磨は「日向と戦うこと」を「ゲームみたいに」楽しんでいるのではなくて、「日向というゲーム」そのものを楽しんでる。だから面白くなくなれば、クリアしてしまえばそれは(日向は)「クリアしてしまって悲しいゲーム」になるだけ。日向がずっと面白いまま、研磨にクリアされることなくいることができたら、研磨はずっとこのゲームをプレイし続けることができる。ゲームクリアの悲しみなど味わわなくていい。そんな研磨にしか分からない研磨だけの話を、生身の人間にぶつけられるあまりにエゴイスティックなところが本当に気持ち悪くて恐ろしくてたまらない。いや〜〜大好きだ。


試合の勝敗と日向研磨の勝負(別に以外のことを言わせることができるのか)はそれぞれ別のところにあるものだと思っていたけど、研磨に何かを言わせることって、烏野が(日向が)勝利した先でしか叶わないものなんだなと実感した。


今週ちょっとすごかった。最後の研磨があまりにも…。この試合が進むごとにより一層、研磨が「別に」以外のことを言うなんてあり得るのだろうかと思えてくる。先制点は烏野が掴んだけど、どうなるかな。