ハイキュー!!第269話「けものたち」

音駒vs早流川決着。決着の直後、倒れこむ研磨を除き息を切らす音駒メンバーの表情が皆描かれているのと対照的に、早流川のメンバーは同じく息を切らしながらも描写されるのはその背中やうつむいた後頭部のみであるという点が大変印象的。描かれていないことこそが彼らの敗北の瞬間の表情をかえって表現しているようにも思える。早流川の横断幕は「何度でも立て」。ここで一度地に伏せた彼らがまた立ち上がり、次を見据えて歩んでいくであろう姿はIH予選で負けを喫した烏野の姿と重なるし、「勝ち」「負け」の事実を前に、主人公とそうでないものに差はないんだなというのが改めて胸にくる。猫又監督が研磨を指して言った「時には俺が思っている以上に好戦的だよ」という言葉もまた良くて、監督と一選手の関係や印象が常に変わっていく生っぽさというか。早流川の監督に猫又監督のかつての教え子という設定を作るあたりもいいよね。白布の中学時代の回想に和久南の川渡を登場させたこともそうだし、一見単なる「過程」の描写であっても、そこに想像の余地を生むような細かい設定を加えるというのが好き。

 

研磨の「更に自分を追い込む作戦」について。「3セット目にいかないための2セットの無茶」には納得。錯乱状態の時は2セット捨てたいみたいなことを考えていたけど、あれはかなり思考が回らない状態だったんだね。 で、「根性」について。「義務感ていうか」「皆頑張って上げてるからおれもちゃんとしないとみたいな」「仲間のためにがんばる」研磨の口から発せられた言葉がいちいちエモすぎる。海さえビックリだもんなー。1コマ挿入された研磨の小学生時代のコマがまた涙腺に来る。研磨が「仲間のためにがんばる」こと、またそれを自覚して口に出せるということが音駒にとって・研磨にとってゴールとして描かれるのではないっていうのもまたいい。部活を通して得られる財産は仲間です、というのもきっと間違いではないけれど、本作がまっすぐ直球でバレーボールについて描く中では、何よりもバレーボールをするということ、そしてその先の勝敗について、しっかり高いところに価値を持たせている。そういうところがやっぱり信頼できるし、だからこそ「仲間」「努力」みたいなものを描くのにもいやらしさがないんだと思う。そして少し微笑む黒尾の表情にアテレコする夜久さん。ギャグっぽいけど結構これは的を得ていると思う。そしてそれが黒尾の独白として描かれているわけではないっていうところもポイントっぽい。今試合は特にだけど、黒尾の独白が明らかに意図的に排除されているのを感じるので。

 

日向と研磨。研磨にとって日向は「強いBOSS」なんだな… 地区予選では先に春高出場を決めた烏野が音駒を待つという構図だったけど、今回は逆。そして予想はしていたけど2セットは14-7でダブルスコアで負けている。こえぇ。そして驚きなのは、ここに来て西谷が狙われるという展開。西谷がジャンフロ取るの苦手っていうのはとにかくずっと描かれてきたことなのでついに来たかと言う感じ。苦手とはいえ、「あの」西谷が取れないっていう精神的なダメージは大きいと思うし。音駒のすべての攻撃の始点である研磨が狙われるという展開から、烏野の攻撃につなげるための土台たる西谷が狙われるという展開につながっているんだね。このセット落とすのは確定だろうなと覚悟してるけどこわいなぁ。また次週からは烏野vs稲荷崎。まだ描かれていないことも多いので楽しみです。