ハイキュー‼︎第267話「罠」

今週のハイキュー。石川代表の早流川は、名前の由来もみんな石川の地名かな。お顔がお猿さんぽくてかわいいです。


少々ライト側に流れた黒尾のレシーブに対して「ナイスレシーブ!」と声を出す音駒ベンチ。で、モブが「そこまでナイスでもないじゃん」と呟く。ここのいい違和感。確かにナイスレシーブではない。最初に読んだ時の解釈としては「早流川優勢の流れでも声を出して自陣を鼓舞する」「あくまでもモチベーションを落とさない」ことがさりげなく描かれてるのかなと考えたんだけど、ここが2回目に読んだ時全く意味が変わる。このシーンの小さな違和感が、今週ラストのゾクゾク感につながってる。


福永の上手さってそう際立って描かれたことはないと思うんだけど、東京予選からはどうも素人目にもコースを狙って打つということが得意なように思う。派手じゃないけど、守備に力を入れる音駒の中で、いつも一定の点数をあげている選手なんじゃないかな。実況解説が音駒のセンター線が強力と評しているのになんか萌えた。リエーフなんか、東京予選の最後の最後に殻を破る瞬間が描かれた選手だけど、まずもうこの身長が相手にとってひとつ囮になっているという、身体的卓越性のどうしようもない強力さ。


美華の「優たちもセッター狙えばよかったんじゃないの」という疑問。無邪気ながら核心をついてる。ここのアンサーとしては少し不十分かなという気もしなくもない。つまりは、「セッター以外ならサーブで狙うというのは常套手段だが、セッターは基本的に2番目にボールに触るポジションだから(意味がない?)」「(早流川のように、1番目にボールに触る選手を崩してAパスの余裕をなくすことで)セッターに間接的に圧をかけるのは根気も勇気もいるし、それを叶えるために音駒のカウンターを受け続けるだけの守備力も必要」ということを言っているんだと思うけど、2番目にボールに触るポジションだから…というあたりが少々不明瞭というか、例えばサーブでセッターを狙うことでセッターが1番目にボールに触ることになり、他の選手がトスを上げる必要が出てくる、というだけでも音駒には効き目があるのかと思うんだけどどうだろう。もちろん早流川のやりたいこととは違ってくるわけだけど。そうなると音駒は研磨をサーブで狙われても他の選手がカバーして研磨の代わりにレシーブに入って、問題なく研磨に繋げるというような対策ができてしまうということなのかな。その時その時の音駒の攻撃のリズムを崩すというよりは、じわじわと音駒のリズムを根本から崩していくということか。とすれば、早流川のやりたい方法ではセッターを直接狙うって方法が取れないのは納得かな。で、戸美がそれをできなかった理由としては、まず音駒のカウンターを受け続ける守備力がなかったということかな。そして戸美の得意なやり方は早流川とは真逆のフィジカルよりメンタルを削っていく方法で、それは研磨には有効ではないしリエーフと山本には極めて有効であったからそちらを狙った、ということかな。


リエーフはバンザイブロックからなんとか脱してる。細かいけどいい描写。ただまだ横っ飛び気味なのはリエーフの身長の利を考えるともったいないのかな。


山本がブロックされたボールをリエーフが後ろで腕を伸ばして触り、研磨がトスを上げに走る、というところでついに、研磨がフィジカル面のダメージから転倒。実況解説は早流川の作戦によってそうなってることを察していない?早流川監督の回想で分かりやすいのは、最初に挿入されるコマのバレーボールが白。ここで、ずっと前の回想だということがわかる。ここで猫又監督が言っている「試合全体の流れを考える」という言葉が、ここでは早流川の作戦の成功に寄って聞こえるんだけど、最後まで読むとここもまた一味違う。転倒した研磨に対するチームのリアクションは極めてライトでいいよね。黒尾は研磨の言う通りちょっと嬉しそう。研磨が必死だということが嬉しいんだろうなぁ。前回までの回想を見ても、黒尾にはそのあたりの願望みたいなものがある気がする。そして夜久さんのきっちり正面に回り込んだレシーブから黒尾の速攻、という非常に音駒としては強い流れだと思うんだけど、これをワンタッチした早流川に研磨が「ちっ」と舌打ちをする、このあたりに滲む負けず嫌いっぷりがまぁかわいいよね。で、ブロックを避けて前に落とされそうになったのを福永が拾う。で、それを上げにまた研磨が走る。黒尾も福永も走っているんだけど、今度はライトの海に上げる。今週の最初と同じ流れかつ、今週の最後にも掛かるシーン。実況の「ブロックが手薄だったライトへ」というのもミスリード?何か考える早流川の監督と、「音駒もだいぶ慣れてきてる」と鼓舞する主将の背後に映る研磨の後ろ姿の、じわじわと来る小さな違和感。夜久さんがしっかり正面で上げたレシーブは少しライトに流れる。大将の「そこはしっかり上げてやれよ」というセリフ。もうこのページの全てに、どこか小さく違和感がある。読者は夜久さんは実力者と分かっているからこそ、綺麗に上げたと思ったけど、という違和感であったり、極め付けは大将のわざとらしいまでのセリフ。そして早流川もその違和感と音駒の意図に勘付く。しかし気付いてもなお、未だ研磨の手の上。気付いたことまでも逆手にとって、ライトに上げる。研磨のトスフォームが非常にコンパクトでモーションが少ないからこそできることなのかな。ここでも実況解説では早流川に音駒が対応したという語り方をしているわけで、だからこそ「あえて」という言葉の選択になるんだよね。しかし実際のところここで行われたことっていうのは、「あえて」レシーブをライトに寄せてブロックをライトに集めることでレフトの攻撃を通す、のが気付かれたためにライトへ、という流れ。そして気付いた早流川の「じゃあそれって…いつから?」という言葉がもう気持ちよすぎる。超ホラー。この会話のテンポだとか、後半のいろんな人物の独白を利用した畳み掛け方、静寂と焦りみたいな、そういうの全部が気持ちいい。いつからだろうと考えれば、中盤にも同じく「あえて」と見せかけて…というシーンはあるんですよね。海のスパイク。そして更には今週の最初のシーンでは既に始まってる。つまり、側から見たら「ナイス」でもないのに「ナイスレシーブ」と音駒ベンチが声をかけるというシーンですけど、あれは紛れもなく「ナイスレシーブ」だったということ。ライトに流れたあの黒尾のレシーブは、研磨の策に繋げるための、音駒の計算の内の、文字通りちゃんとナイスレシーブだった。音駒がチームでこの研磨の策を共有しているか?という疑問には、夜久さんのレシーブあたりからも、共有してるだろうという答えでいいんだと思うけど、たとえ共有していなかったとしても、ベンチメンバーによるナイスレシーブという声については、外から見えているものと内から見えているものが違うということ、それを表現しているという意味もあるのかな。


今週は本当凄い。最近でもかなりのお気に入り回になりました。今週読んでの疑問としては、この作戦が研磨個人によるものだったとしてもチームで共有されているとしても、実際のところ研磨が疲弊していることは事実なんだよね。だから早流川の作戦に乗っかった音駒の作戦は有効だとしても、研磨のフィジカル面への負担というのは変わらない。そこのところはどうなのかなーという疑問。

ここは素直に音駒がストレートで取るかもしれない。もう1セットとなると、やはり研磨の体力的に厳しそうだし。音駒が逃げ切ったという形になりそうかな。というところで今週はおしまい。