ハイキュー‼︎第266話「ネコVSサル」

センターカラー。淡い感じ。オレンジコートかな。日向と影山のよく分からないポーズがかわいい。影山の不慣れ感。5周年企画の横断幕、こういうことだったのか。てっきりどれか1つ採用されたものが作中の烏野横断幕の1つとして登場するってことかと思ってた。あと「春高応援席に登場」のモブキャラたちが応援席ですらなく普通の道端のモブになってたりして笑った。これはどうしても今週じゃなきゃならなかったんだろうか……若干当初の告知とズレてるような。


本編は音駒の過去編。2年生の入部したての頃。体力のない研磨は走るのは嫌いだけど、周りの景色と走りながら考えることはちょっと好きだ、と言って彼らしくゲームにちなんだ空想をしながら走っている。この描写すごいなー。きゅんとした。研磨は自分の中の好きって感情にわりかし鈍感というか、自分でも気付いていないような部分があるんじゃないかなとこのシーンを読んで思った。走りながらこうやって空想して楽しめるのって、「走るのが好き」に含まれると思うんだよな〜。そしてその研磨と対照的な山本。「根性〜!!」と言いながら走る、いかにもな感じなんだけど実際のところは、というのが結構今週の肝。


山本が「黒尾さんの身内だろうと」って研磨に食ってかかるわけだけど、いいなと思うのは、夜久さんや海とのやりとりを見るに、研磨がゆっくりと築きあげている音駒の部員との関係っていうのに、全く黒尾が関与してないんだよね。黒尾も注意こそするけど、干渉しすぎるわけじゃない。ここ、夜久さんとあんなにバチバチやってた黒尾が「同級生とは長い付き合いなんだから」って言ってるところがかわいいよね。なんだかんだで高校生らしいかわいらしさを感じる。夜久さんはこの頃研磨のことを苗字で呼んでいるけど、いつからか「研磨」になったんだなぁということもなんだか和む。黒尾の呼び方を真似て「研磨」と言っているんじゃなくて、夜久さん自身が仲を深めていったからこその呼び方の変遷なんだよねー。ぐっとくる。


そして研磨が山本に寄っていく。ここ非常に細かくて先生らしいなと思うのは、黒尾が先生に呼ばれているっていうのを出して、黒尾が不在の状況を作り出してるんだよね。先生としても、黒尾がここにいたら止めてるだろうとか、或いは黒尾不在の状況で研磨が体当たりで関係性を構築しようと一歩踏み出したことの価値とか、当たり前だけど黒尾が研磨の全てに関与しているわけでも知っているわけでもない一他人だということ、そういうことを重視されたのかなと思った。そして研磨に関して意外でありつつも非常にいいなと思ったのは、彼が音駒で心地よくいられるのは全くの受け身でみんなが優しくしてくれる気にしてくれるってことではなくて、研磨自身こうやって踏み出すことが、時にはできるということ。自分とは正反対の山本に「根性が」と聞き入れてもらえなかったとしても、そこで引き下がらずぐっとまた寄っていくっていうのは、私にとっては研磨の新しく見えた部分だなと感じて、もう根本的に負けず嫌いだし頑固なんだろうね。人間関係煩わしい、みたいなのも、はじめは内に閉じこもった印象を持っていたけど実のところは非常に頑固な部分が出てるのかなと思った。そして「根性」といつも口にする山本に「もっと具体的な反省をした方がいい」と言う研磨もまたいいー。後に続く「オーバーワークは努力じゃなくて自己満足」という言葉もそうなんだけど、ハイキューの中でも部活をやる高校生としては王道とは少し外れたところにいる(ように思えた)研磨が言うというのにグッときた。そして研磨が言うことは事実であり、真実でもあるのだろうけど、山本からしたら「やる気のないように見える」のに上手い、研磨がただただ正論をぶつけてくることに対する苛立たしさみたいなのはすごく共感できる。実際これ黒尾とかが言えば素直に受け止めるのかもしれない(まぁ素直に受け止めすぎてダメージも大きいかもしれない)。そして掴みかかってきた山本に、珍しく大声をあげて反論する研磨というのがまた新鮮かつ面白いし。「根性根性って体力が1余るわけでもないし」って、ゲームに寄った自分の言語を使って反論するんだけど山本は当然理解できないし、というところもめちゃくちゃ面白くて、先週の回想では黒尾に対して「レベル上げ」という研磨の言語が十分に通じて、2人の間である程度共有されていたことと対照的に、正反対かつ互いに歩み寄る気のない山本には研磨の言語が通じない。で、その仲介としてやってくる福永もまた「やりすぎドフトエフスキー」と、自分の言語を用いてやって来る。この噛み合わなさが逆に噛み合っているみたいな。面白すぎる。で、研磨はこの福永のセンスをちょっと気に入って、多分ここで福永の言語が研磨に受け入れられるものになっていくんだよね。共有しなくても相互理解がなくても、お互い全然違う言語を使ってお喋りができちゃうみたいな。


で、この一件を経てもなお研磨と山本が「仲良く」なったりするわけではなくて、だけどバレーボールにおいては大きく相手を意識するようになっていくんだよね。山本は研磨が「とんでもねえ負けず嫌い」だと気付く。ここが2人の間でバレーボールという言語が共有される瞬間なんじゃないかなぁ。


オーバーで上げるべき場面で届くギリギリから動かない研磨にめちゃくちゃ笑った。確固とした意地みたいなものを感じる。


そして「トラと呼んでいいぞ 仲間はそう呼ぶ」に呼ばないとだめ?と返す研磨、に笑ったらその裏ページで「虎!」と声を出している研磨、というね。エモすぎる。そして1年生によるオーバーアンダー解説がわかりやすすぎた。


そして最後、「Aパスに甘やかされたセッターを潰す」という策に「俺たちは音駒だから」「慣れてみせるよ」と、黒尾。音駒はチームとしての共同体意識が強いというか、個人によって構成されるチーム、というよりはチームがまず先にあって、そこから個を取り出すのが研磨、というような印象。「慣れて」に点が付いているのは、4巻の「どんなに難しいゲームでも繰り返す内に慣れるんだよ」という研磨の言語かなと思うとまたエモい。


最初はソリが合わなかった彼らがチームになっていく過程というのが、筋書きだけ取り出せば3年生とも被るんだけど、「歩み寄らなくても認め合っている」側面を2年生の過去には感じた。いやー面白かった。エモかったし。来週も楽しみ。