ハイキュー!!第254話「変人・妖怪・魑魅魍魎」

センターカラー。アイスにむしゃぶりつく日向・西谷・田中。このくくりは初めてなのかな?部活Tっぽいいつもの服装な西谷はガリガリ君、青いTシャツにインコの総柄パーカの日向はスイカバー、白Tシャツにオレンジ色のゴツめの腕時計、黒いキャップを後ろにかぶった田中はコーンのアイスクリーム。めちゃくちゃ爽やか!それにしても田中がめっちゃオシャレー。オシャレな旭さんに「田中はオシャレだもんなぁ」と言われるだけある。そして今回のカラーでは男子高校生らしいんだけど小物がアクセントになっていてかわいらしいし田中っぽい。あと日向のインコ柄ねー。これかわいい。商品化してほしい。


で、今回のタイトル「変人・妖怪・魑魅魍魎」がまたいい。語感の良さもまた。ハイキューでは「妖怪」ってよく出てくる。それが何を意味するかって、読者は読んでて自然と共有できてるんじゃないかなと思うけど、具体的にどうこうって説明もまた難しい。wikiで見ると妖怪は「人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、それらを引き起こす不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在」とかって記述があるけど。

 

宮兄弟の変人速攻に対する日向・影山の反応。日向は「なぁにィ~!!??」と驚いている様子ではありながらも、ショックだとかそういう反応は見られない。影山も落ち着いていて、宮侑のセットアップに対して何か考えているのかなという想像。先週烏野メンバーが見せた表情だとか、先生やコーチの少し焦った様子とは若干差があるのが面白い。展開としては「これヤバくない?」って描写なんだけど、当人たちを見るとそうでもない。ただそこに違和感はなくて、日向も影山も、そこにショックを感じたりするような段階ってもうとっくに通り過ぎてるんだよね。影山の「ゼツボー」は「バレーができなくなった時」だけだし、日向の強みって「速さ」「高さ」を兼ね揃えた変人速攻とか囮、というよりは、そういう新しい選択をどんどんしていけるところ、っていうのが伊達工との練習試合でも描かれていて、2人にとって変人速攻って多分「アイデンティティー」みたいなものと同義ではないんだよね。だから驚きこそあれど、当人同士が精神的にダメージを食らってるわけじゃないというのは納得できるし好きだなぁ。宮侑が言っているように「飛雄くん程の精度は無理」ということなので、治相手だからこそ速いトスでも「どんぴしゃり」合わせられるとか、治の方が少しトスに合わせる必要がある、ということなのかな。「かっこいいモンはマネしたい」という宮侑の言葉もよくて、話数が進むにつれて結構宮侑のキャラクターが見えてきている感じ。バレーうまくなりたい、いいプレーをしたい、かっこいいものが好き、だから強いものが好き、強くなりたい、みたいな、わりと単純なというか、シンプルな感じなんじゃないかなぁ、意外と。

 

そして赤葦。「相手の得意なことを敢えてやって見せることで精神的圧力をかける」「それをやれるセンスとやってみようと思い切れる事に嫉妬しますね」。木兎さんは「へーっ」という、まさに「わかっているのかいないのか いや どうでもいいのか」測り兼ねる、といった反応。ここの赤葦がめちゃくちゃ気になる。赤葦が自分の話をするというのが新鮮でもあって、赤葦って、初登場時にはなんとなくシラーっとした、落ち着いている感じの印象があって、それが「木兎さんのスパイク練、際限ないからみんな早々に逃げるんだよ」(でも赤葦は付き合ってるんだよな。)とか、木兎さんのその瞬間を見た赤葦の、いつもの冷静な表情が崩れた熱い部分だったりとか、プロフィールの最近の悩みが「もうちょっとパワーをつけたい」で、実際パラメーターを見てもパワーがやや低めという描写があったりとか。落ち着いているように見えて、意外と熱くて自分の目標に見合った努力もできる子、という印象に変わっていったんだよね。なんだけど、東京合宿最後の烏野との試合では、ついに完成した日向影山の新速攻を見て「俺にはあんなトス無理だ」と冷静に分析して線引きするようなところもあって。でもその線引きも、卑屈になっているわけではなくて、「別の戦い方ができる」と知っているからこその自信という印象。そして今回。宮侑が、やりたいと思ったことを実現できるセンス、技術的な上手さに「嫉妬する」と言っているのもそうなんだけど、個人的にすごく気になったのは「やってみようと思い切れることに嫉妬する」という部分。「やってみようと思い切ること」っていうのは、それだけ見ればまだ何も為していないわけで、だけどそこにも思い切ることが「できるやつ」「できないやつ」という線引きは確かに存在するんだなという。春高予選でその線を飛び越えていけることに気付いたのが及川なのかなと思うんだけど、赤葦の場合はちょっと違っていて、多分その線を飛び越えなくても赤葦の強みって十分発揮されてるんだろうなと思う。赤葦が常に冷静に客観的に、総合的な判断を下せる、土台となる強さを持っているというのは「思い切れる強さ」とは正反対のところにあって、そこに優劣がつくものではないとは思う。それは常に安全なプレーを選択する、ということでもなくて、現に赤葦もレシーブが乱れたところから強気で速攻を使っていったりなんかするわけで、多分「今もっとも有効な攻撃」を常に考えてそれを選択していける選手。対して宮侑は、本来「今もっとも有効な攻撃」ではないような選択肢を選んで、それを有効な攻撃に「できる」ような強さがあるんじゃないかな。赤葦がそれをうらやましい、俺にはできない、と思っていることは少し意外でもあった。でもなんか嬉しかった、この子はまだまだ挑戦できる余地がある、ということが。端的に言ってしまえば彼に関する話で伏線が張られたように感じて嬉しい。「自分も飛び越えていける」と思ってほしいなぁ。それが自分の強みとイコールでなくてもいいし、俺の強みはこれじゃないなと気付くのでもいい。もちろん赤葦の強みのひとつになるんならもっといい。ただやろうと思えば自分もやってみようと思い切ることができる、と感じてほしいのかなぁ。完全に私のエゴだけど。「妖怪」という言葉はここにもかかってるんじゃないかなぁ。宮侑はきっと妖怪だし、赤葦は妖怪ではない。妖怪じゃないと戦っていけないと思い込んでいたのが及川なのかなとか、妖怪じゃなくても戦えるとは知っていても妖怪に嫉妬してるのが赤葦なのかなとか。そういう赤葦に「へーっ」としか言わない木兎さんがまた妖怪っぽいもんなぁ。木兎さんは実際のところ妖怪と形容されたことはないし、私自身あまりそう感じたこともないんだけど、「やってみようと思い切れることに嫉妬する」という赤葦の思いは木兎さんは理解できないのかもなぁ、とは思ったり。ただ木兎さんが例え「赤葦はこういう強さがあるんじゃん」と言ったとして、「飛び越えていけない」と思っている人にそれはやや無意味か…?と思わなくもない。梟谷は木兎さん以外は、結構器用にやってる子が多いのかなと思う、だからこそ木兎さんの調子がどうだろうと揺るがない、という土台の強さにつながっているわけで。だから木兎さん以外のメンバーがどうにか赤葦のことを押し上げてやってほしいかなぁ。木兎さんは木兎さんで、梟谷のメンバーの支えがなくてもやっていけるよう自立するって課題があるんだろうし。梟谷の試合が描かれるか分からないけど、最近の描写を見てると、どれもこれもフリに見えてくるし、やっぱり見たいなぁと改めて。今回は赤葦自身の言葉が聞けたのが嬉しかったし、伏線であってほしい。「嫉妬します」と口にした赤葦の思いに応える何かがあってほしい。

 

「さすが双子の呼吸」という実況の言葉や、アランくんの「双子ならではの信頼感やな…!兄弟ってええなあ…!」という言葉に宮治が「別に侑を信頼なんかしてへん」「別に信頼なんか要らんやろ ボール来るって知っとるし」と結んでるのがまた大変好み。めちゃくちゃいい。大好き。「思いの強さ」「絆の強さ」「信頼関係」みたいなものは当然存在してはいるし、人間がスポーツをやる限りプレイヤーの持つある意味ノイズのようなものとして試合に関わっているっていうのも本当だと思う。「ボールを操る才能」だったらピカイチの影山が、中学時代それ以外の部分で問題が生じたために敗退したこともそうだし。試合っていうのがそもそも「能力の卓越性」だけを抽出して競えるものではないよね。だから信頼関係があることと試合の結果ってもちろん関連はしてるけど、時に「信頼関係」だとか普遍的に価値を持つものが直接的に試合の勝敗とそのままイコールにして語られることがやっぱりあって、それは違うよなって思う。それ「だけ」じゃない。ただハイキューでは、「思いの強さ」とか「信頼関係」をドラマティックに描いた上で、それって勝敗と「イコール」ではないよね、と結んでくれる(裏返せば、確かに勝った方も思いが強いけど負けた方もそうだよ、という描き方)ので、フェアだし気持ちがいい。双子は共に過ごした年月の長さゆえ合わせ慣れはしていても、双子であることそれ自体が能力ではない。そういう安心感。


そんなこととは別に、治によって回想されるエピソードがどれも普通にかわいかった。お気に入りは、治と書いてあるプリンを治の目の前で食べて「食ってへん!!」と言う侑。わりと自由にしてる侑に振り回される治というのは結構イメージ通りかな。あとは「ボール来るって知っとるし」が好き。信じてるとかじゃなくて、経験によって裏付けされていて、ただ事実として「知ってる」。

 

宮侑3回目のサーブ。今回はジャンサ。大地さんが受けて西谷がアンダーでセット。アンダーなんだよね~!これは意識的に描いてるよね、西谷はオーバーでセットしないというのは。今後の伸びしろなのかも。そして旭さんがブロックアウトで得点。緊張しやすい旭さんに対してコーチの実践的なアドバイス。それにしても、ぐーーと握ってパッと放す手の絵が上手い。そしてサービスエース。説明されずとも旭さんがこう「普通に」活躍している、点数を重ねているのがよく分かる。そして印象としては稲荷崎にやや押され気味の烏野だけど、点数としては11-9でそこまで離されているわけでもない。やや心配気味の先生に対してコーチがしっかり論理的に、「心配しすぎるな」ということを語るんだけどこれもまたフリというか、安心するための材料が後の描写で不安に足る材料になっているのが面白い。こういうときの不安はすごい。治の「お前キモチワルイわ」に対して「あんま褒めんといて!」と嬉しそうな様子の宮侑はやっぱり妖怪。そして期待できそうな月島!嫌そうな顔。ずっと変人速攻の対で見てきたのが月島だから、何かしてくれそうだという期待が持てる。宮侑を「見過ぎ」な日向を月島が見ているのが面白いwで、月島はリベロの方にサーブ打っちゃってる。地味なコマだけどこれも意図的にだろうな。月島に関してはブロックで開花するのを読者は長い時間費やして見てきて、これ以上ない成長を見せてもらったわけなので、伸びしろとして十分期待できる。日向がまんまと宮治にブロック跳んじゃってるのとかめちゃくちゃ切ない…日向もまた課題がてんこもり、伸びしろ十分。角名に上がったボールをまたも大地さんが上げる。そして影山の傾向を見て読んだ宮侑。「超が付く気の強さとそれに見合う技術」という表現にキュンとしながらも、そのとおりですといった感じで読んでいてもめちゃくちゃ焦る。超が付く気の強さで速攻を成功させれば相手にとって大きなダメージにもなるけど、それ故に攻撃が読まれやすくもなってるという感じ?そして止められる。稲荷崎の「変人速攻」はしっかり決まっているのに対して「本家」はついに封じられたというのが結構きつい。不安はそれほどないんだけど、「どう対処するの?!」というのが全く分からない。日向の表情がなんとも言えない。もちろんガックシきてるわけではないんだけど。というところで来週。