ハイキュー‼︎第307話「粘り」

第1セット直後、烏養コーチの話が素晴らしかった。「ミスを避けて入れる」サーブははなから選択肢にはなく、「強いサーブを外さない」という正解に対して、「強い(あるいは戦略的な)サーブで攻める」という手段があるのみ。これがチームで共有されているという時点ですでに凄いことなんだろうと思うけど、この話を烏野の誰もが共感・納得できる「前提」として提示した上で、「どう持っていくかで〜」という、今回1番言いたかったことに繋がっていくっていうのが、もうめっちゃすごい。この作品では「ミスを避けて入れるサーブ」を決して許さない。だけどそれはこの作品の・この世界の最初から誰もが共有していたものではなくて、山口や旭さんを通して、キャラクターと共に読者もまた1つ1つ掴んでいった感覚だと思う。そういう過程を説得力とドラマを持って描かれたからこそ、「ミスを避けて入れるサーブを選ぶこと」は選択肢にすらのぼらないだろ?という話が「導入」として機能する。


「さっきの正解」を、「俺のボールでした」と自省する大地さんに喋らせるところもいいよね。そしてこれまでは烏野のコンセプトを「支える」役割の大きかった彼がこれを言うということ。烏野の決して譲れないコンセプトを今改めて主将の口から確認するということも、すごく意味のあることだなと思う。烏野は苦いセットの落とし方をしたけれども、具体的な反省点と改善策を改めて再確認し合った上で、自分たちのコンセプトを貫くことに関しては、コーチという立場から「迷うなよ」と強く言葉が掛けられたのが本当に良かった。


第1セットがああいう形で終わった時、やっぱりコンセプトに迷いが生まれることになったらそれはまずいけども、どうにかして音駒には対処していかないといけないんだよな、どうするんだろうなと考えていたんだけど(http://pero2pero.hatenablog.com/entry/2018/06/08/071213)、今週、烏野はコンセプトを決して疑わないし迷わない、そして同時にそのコンセプトを利用してくる音駒に対しても完全に対応する(あのチャンスボールを拾った上で〜)っていうようにコーチは指示した。言うのは簡単だけど、実際はすごく難しいはず。烏野がコンセプトを貫き続ける限り、やはり穴になるところはできてしまうしノーリスクなんかではない。それは全員が攻撃に入るシンクロ攻撃を見れば非常に分かりやすい。守備を0にして攻撃に100振って、それでもリスクがないなんてことはあり得ない。リスクは必ずある、だけどそのリスクに完全に対応した上でコンセプトを貫き続けろ。このミーティングを経てもなお烏野の負担は変わらないけど、それでもこの意識を改めて全員で共有・確認し合うことにはすごく意味があるんだと思う。「迷わない」ことを迷わない。


旭さんのサーブはアウトになったけど、今回切れたからで終わりじゃない、確実に先のある1本。「入れてけ」サーブは、先がないんだよね。「今回」入った・入らなかった、あるいは点になった・ならなかった、というそれだけ。今回入っても点になっても、先に繋がらない。レシーブが乱れた場面から「タテの速攻」。このワードかっこいいな… あとここはちょっとローテーション変かな?黒尾サーブのローテでリエーフがブロック、夜久さんがレシーブっていうのはあり得ない状況だよね。先週今週ちょいちょいローテーションが変かな?ってところがあって、大丈夫かな…めちゃくちゃお忙しいのはカラーの連発を見ていてもう分かりすぎるくらい分かってしまう…余計なお世話なのは承知で、ご無理をなさらないでくださいな…とやはり心配してしまう。


1セット目最後と同じ、前に落とす研磨のレシーブ。だけど烏野も前と同じじゃない。黒尾と研磨のすれ違いざまのやりとり、いいよね。幼なじみとかトモダチでもあるんだけど、この場面に関してはチームのメンバー同士のやりとりっていうか。研磨の烏野評がまた嬉しい。全員が攻撃意志を常に高く持ちそれを実現できる技術を持ちながら、「考える」こと、頭を使うことを決して怠らないっていうのは、先生にとって理想的な、こうあってほしいバレーの形の一つなのかなとも思う。


天童が実況の人に厳しいのは、先生が天童に託してるものが大きいことがあるのかなと思う。天童の実況の人への厳しさは、先生の実況の人への厳しさなのかなって。


音駒だけがなんとか烏野の攻撃に食らいついて粘っているように見えて、実際はそうではない。音駒が粘りボールを返せば、烏野も同じように攻撃に繋げてくる。それも、常に攻撃全振りって勢いで。烏野のコンセプトはそうだから。そして当然ながら、重力に抵抗し続けなければいけなくて、常に攻撃に全部をぶち込む烏野の方が、負担は大きい。「粘り」の勝負になってしまえば、「粘り強い方」が勝つのではなくて、「物理的に粘れなくなった方」が負けてしまう。音駒はそれをちゃんと分かってて、「音駒が粘っている」どころか、そもそもが音駒に有利な展開なんだな。そりゃ勿論、音駒だって烏野の攻撃を受け続けなきゃいけないわけで、それも大変なことだけど!数×機会×威力が圧倒的である烏野の攻撃は、その代わりに消耗の程度もまた半端ではなくて、烏野の攻撃を上げ続けることは着実に烏野を追い込む。言うのは簡単な当たり前の話だけど、それをやってしまう音駒の守備力がやはりすごいし、それだけではなくて、試合を通して、こういう目的のためにこういう手段を取るっていうような作戦をいくつもいくつもぶつけて来る。音駒の取る作戦+圧倒的守備力+体力の消耗+リアルタイムで為され応用される観察・分析、っていうのが常に同時に烏野の前に存在してる。


いやゴミ捨て場はほんと、読んでいるだけなのにどっと疲れるな!笑 音駒が本当に、自分の想像を易々と超えていくので、面白くてワクワクして仕方がない!第2セットもまだ序盤だけど、烏野には着実に迫ってきている体力の問題。一朝一夕ではどうにもならない問題だからこそ、一体どうなるのかな。というところでまた次週!