ハイキュー‼︎第263話「パイセンの意地」

先週の不穏な引きから。ベンチメンバーの苦しい表情や例のカップルの声、少し焦ったように見つめる叶歌。日向の表情が映っていないのが印象的。いつも田中に鼓舞されている日向が、今回の田中に何を言うんだろうという溜めになってる。田中のことを「元気が取り柄」というように言っていた男の子たちがすっかり感情移入しているあたりとかもいい。そしてはじめは不安な顔を見せた2年生が「田中だし大丈夫」と信頼を見せているのもよかった。「いつどんな状況でも部にい続けたのは田中だけ」というのも、田中と3年生の絆を思う上でよく考えることだったのですごくグッときた。先生としても、作中の2年生としてもその事実はしっかり重く扱われているというのが嬉しかった。

 

稲荷崎の強力なサーブに崩された烏野の攻撃を予想する赤葦。ウチだったら、というシミュレーションでもあるんだろうね。赤葦自身、月島が残りの前衛田中に上げると考えたし、大将も「定石だから」とそのように予想、そして以前勝負にビビってトスを上げなかったことを悔やんだ経験のある田中もまた、ミスが続いてもなおトスを呼ぶ。しかし月島が上げるのは旭さん。ここのどうしようもないつらさの描写が良かった。過剰な演出をするわけでもなく、ただ「違った」ことを事実のまま口に出す美華とその意味を知っている大将の対比であったり、かつて「トスが上がること」で自信を取り戻した旭さんの裏返しとしてトスが上がらなかった田中の何とも言えない表情であったりが、とにかくよかった。更にその中でも際立っていたなと思うのは木兎さん。その表情はコマの外で見ることができないんだけど、ぶっ倒れそうなくらいに田中に感情移入してしまって辛い木兎さんの気持ちがよく分かる。調子の波があるのはギャグ的に描かれてはいるけど、同時に「木兎さんにとってはそれが非常に重要な問題である」こともまた描写が繰り返されているんだよね。それでもナイスキー!と声をかける田中。叶歌のチームメイトが考えているように、月島の判断は「間違ってはない」。そのこともまた辛い。そして日向が田中に声を掛けるんだけど、この嫌味のなさは日向のキャラクターに支えられてるな〜。日向はスゲーと思ったことはいつも口に出して、感覚的な言葉で力強く伝えるし、それが誰のためというよりは、ただただ凄かったから、それだけという感じで。普段からそうであるからこそ、今回も「良かったプレーは良かった」という事実だけが強調されて伝わっているのかな。田中と日向のブロックを褒めるのが西谷というのもいい!今回みたいにブロックで絞られたコースに抜けてきたのを拾うことの多い西谷だからこそ凄さがわかるっていうのはあるよね。

 

そして田中のモノローグ。田中は自分のことを普通だ凡人だと言っているけど(普段は天才と思うことも多いというのも彼らしい)、まずメンタルの保ち方を思えば十分な資質だと思うし、平均的なプレーのレベルの高さは十分凄い。それでも「チームで俺が1番だと思える部分はない」という冷静な分析もまたきっと彼の中で事実だし、それでも「諦める理由や言い訳にはならない」と考えられるところが田中の非凡さなんだろうし、「そもそもそんなこと考えない」あたりは特にそう。だからこそ、「天才ではない」と自認する全ての選手たちや、いつかそれに気づいてしまうかもしれない選手たちに寄り添った描写だなと思った。「ところで平凡な俺よ」「下を向いている暇はあるのか」と自分で自分を鼓舞する強さがめちゃくちゃにかっこいい。こういう強さを持っているのが既に非凡であるということすら問題ではなくて、ただただ田中のあり方として「下を向いてる暇ないだろ」と歩みを止めないその様子にもうやられた。かっこよすぎる。来週には田中の活躍に期待したい!