ハイキュー‼︎第236話「アジャスト・2」

椿原の回想から。「ここまでの長い道のりを必死で突破して」とか、読者も身を以て烏野に関して体感していることなんだよね。だからぐっと感情移入できる。そして当然烏野の他の学校もそうである、というフェアな描写でもあり。あとは昨年の椿原で起こったことは当然烏野でも起こりうることで、という話。昨年の椿原は3年生が2人だったんだね。部員もそんなに多くないのかな。結構烏野と被る。ただ烏野は古豪で、椿原は恐らくは新鋭の学校だろうと思うんだけど。


椿原現3年生の「俺達は何もやってねえから涙も出ねえ」はすごく胸にきた。何もやってない、何もできなかった当事者感のなさに起因する自己嫌悪感、みたいな感じには覚えがある。「泣けない悔しさ」って煽り文が入ってるけどまさにそんな感じ。泣けるほど奮闘できなかった悔しさというか。最初のモノローグでも「足は動かない 息が上がる ボールは知らない奴になったみたい」っていうようなのがあったけど、試合中にそれを実感しているというのがまさに当事者感のなさで、試合中自分を俯瞰で見れているということだもんね。ちょっとこのあたりの描写がしんどい。



椿原の監督すごくいいなー。あまりこんな風にミーティング中監督が発言することって、ハイキューではあまり見ない気がするかも?やっぱりこの監督が赴任してきてから強くなったのかなぁ…。監督の言葉がすごくいい。「日向を止めに来たんじゃなくて試合に勝ちに来たんだよ」は、簡単に烏野の思うツボになってたまるか、という、さすが全国にまで出てくる学校という感じで「日向の存在に呑み込まれない」水準を易々とクリアしてる。先生は当初変人速攻を本作で唯一現実離れした、少年少女が憧れるような所謂「必殺技」として構想して登場させたみたいだけど、それでもこれが最強というわけではないのがまた面白いなと思う。優れたリードブロックやそれを軸としたレベルの高いトータルディフェンス、或いは青城が対日向にしていたようなコミットブロック、条善寺のブロックで止めるのではなくレシーブで対処するというやり方…と、変人速攻を効果的に使う烏野の攻撃に対処する方法はたくさんあるんだよね。


日向が後衛に下がったことに喜ぶ観客席とは対照的に、椿原のセッター越後が「10番が下がるのは確かにホッとするけど俺にとっては嫌なターン」「ウシワカを止めたねちっこいブロックが前衛」と思考してるのが非常に好き。月島が厄介なブロッカーとして映っているのがぐっとくる。白鳥沢戦では1番焦点を当てて月島の成長だとか、月島のブロックがいかに効果的か、ということが描かれたけど、言ってしまえばそこでようやくみんなと同じラインに立てたわけだよね。だから今回ドラマティックに描かれることなく当然のものとして優秀なブロッカーである、と描かれるのがすごく嬉しい。月島のレベルの高いブロックは烏野にとって想定内のことであるというか。椿原の選手たちがビデオなんかを見て月島のブロックをねちっこいな〜嫌だな〜って思ったということもいいし。ブロッカーにとっては「ねちっこい」が褒め言葉って感じする。そんな月島の当然のワンチからの、身体能力の高い田中のファーストタッチ。大地さんが「見て」しっかりコース狙って打ってるのもいい。大地さんはどちらかというとディフェンス面が評価されることが多いけど、やっぱり基本的に上手いんだろうなー。そんな大地さんの「見えてる」スパイクを、こちらもまた「見えてる」椿原がしっかり触って攻撃につなげる。ねちっこい月島がしっかりワンチ。実況の「絶対に気持ちよく打たせてはくれない」とかもいいなー。直後の旭さんのスパイクにさっき打ったばかりの椿原の選手がブロックを間に合わせてるのもすごい。そうしてしっかりクロスを締めて、ストレートを打った先にはしっかりしたフロアディフェンス。上手いな〜。そして観客席のカップルが今週もまたかわいい。「すごーい…」「うん」「すげーラリー…!」ここのコマすごくいい!観客席から見たコート。意外とあんまり使われてない気がする。強化合宿編の日向視点のコートのコマも良かったし。やっぱり情報量多くて好きだなぁ。コースはクロスに偏る、という月島の分析を超えた寺泊のスパイクを日向がレシーブ。これも熱い!まだ完璧にレシーブできたというわけではないんだけど、コート上の様々な情報を読んでしっかり上げにいったというところ。日向のレシーブに関してはかなり多く過程の描写があったので、やっぱり熱いし期待したくなる。ローテーションの都合で西谷のいないコートでこれができるようになったらやっぱり強いんだろうなー。というところでまた次週。