ハイキュー‼︎第224話「返還」

1枚目のカラーは五色と天童でテレビアニメ3期の宣伝漫画。天童がめちゃくちゃ理不尽で笑った。そして天童の紹介する3期第1話のラインナップが面白すぎる。鷲匠監督と烏養監督のゲートボール対決が1番見てみたい。カラーの1枚絵は、ハイキュー‼︎の文字が窓になっていて、気候モチーフかな?に合わせてレギュラー陣のイラスト。みんな名前由来。晴天の日向。明るく爽やかな感じ。夜・降雪の影山。雨は田中。これは一瞬イメージが結びつかなくて意外だなと思ったけど、「龍」が水の神っていうのがあるんだね。納得。そして大地の大地さん。そのまま。日の出の旭さんと日の入りの西谷。旭と夕の対比が綺麗すぎる。そして月の出る夜、月島。すごくいいイラスト。今までのカラーイラストの中でもかなり好き。「強くなるのは、今なんだ。」という煽りの文がまたいい。

影山のモノローグからスタート。影山の心情がありありと伝わってくる。相手の強さに引っ張られ、自分も昇っていけると信じてグイグイと調子を良くしている時に、自分ではないチームメイトのミスでそれがプツンと途切れてしまうということに対する苛立ちみたいなのは、チームスポーツにはままあるんだろうなぁ。チームメイトがいることの心強さと煩わしさは紙一重でそこから逃げていてはチームではいられないというのは京谷を見ていてもよく思う。旭さんの「トス良かったよ」に対して「じゃあ決めてくださいよ」と言い放つ影山。あぁこれはなぁ〜。影山の気持ちもよくわかる。影山の問題でもあるんだけど、旭さんもまた足りてない部分があるんだよね。トスはいい、決められなかった俺の責任、と言うのは間違いではないと思うんだけど、そう言われてしまえば影山としてはもう出来ることは何もなくなってしまうわけで。コーチの「これまでスパイカーの要求は矢鱈すんなり飲んでいたことの方が不思議」という言葉にも納得しつつ、そこが影山の問題の核なんだろうな。そして伊達工にセットを取られ、苦い顔をして歩く影山に旭さんが声を掛ける、のを遮って影山が叫ぶ。「俺はいいトス上げてます‼︎もっと決めて下さい‼︎」そして中学時代のことを思い出し、「しまった」と言わんばかりの表情、「ーす(みません)」と打ち消そうとする。この流れが本当に、苦しくて涙が出た。常にストイックに上を目指してきた影山が、高校入学当時、やはり同じトラウマからクイックを使えないというエピソードがあって、でも日向や烏野の面々と出会い、今度はそのクイックを大きな武器として携えて躍進して来たわけで、一見そのトラウマは克服されたように見えていた。でも実際は彼の中に今も強く根付いていた。そのことが、影山の表情の歪み方から強く思い起こされて本当に苦しくて涙が出た。影山があんな表情をするのなんて見たことがなかったし、それほどまでに彼の中で大きな出来事であったということ、そして彼の主張は間違っていないはずなのに、口に出してしまったことを取り消そうとしてしまったことも苦しかった。

日向が言う。「前から思ってたけど王様って何でダメなの?」影山が何言っても自分が納得しなかったらおれは言うこと聞かないし、お前が王様かどうかはあんまり関係ない!と。追って田中は「内容はどうあれ言い方がムカついたら聞かない」と。これは非常に田中らしい。そしてスガさんから「田中は自分に言われたことなら聞くよな、仲間への礼儀に厳しいだけで」と補足。ここすごくいいわー。影山が自己主張すること、要求してくることは全く問題にせず、受け止め、「言い方」に問題があるだろ、というのは読者の視点とも合致してるんじゃないかな。言っていることはさておき、その言い方では感情的に聞き入れづらいというのはやっぱりある。影山の主張の内容を受け止め、また「主張すること」も当然受け止めるとしながら、「それなら言い方は考えろよ」というのは上手く影山の問題をチームの問題に引き寄せていてすごくいい。このことこそが受け止められた証拠だよね。主張をしてくる影山に対して、こちらも主張はあるからな、と対等な関係に持ち込んでいる感じ。旭さんの「優しく言ってもらいたくはある」もまた然り。

そしてコーチの言ったことが「おりこうさん」問題への1つの分かりやすい答えでもあるのかな。「スパイカーが打ちやすいトス以上に最高のトスは無く」「それはコミュニケーションを探っていくものではあるが、ケンカをしないということではない」。影山の問題というのは、「ケンカができなかったこと」であるという。自分の要求を通す。それで中学時代に失敗してしまったために、今度は相手の要求を全て飲むようになってしまったのが烏野での影山で、それが「おりこうさん」と言われた所以だった。そして旭さん、田中が今自分が考えていることを影山にしっかり伝える。影山だけじゃなく、彼らもまたコミュニケーションが足りていなかったというのもあるよね。影山が「場合によります」と返すのは流石。そこですんなり飲み込むのではなく、一応把握はしておくが自分としての要求も譲らないぞ、と彼が最終的に思えたのがやっぱり1番だったなと思う。次期主将である縁下が「何が重たい事なのかは人による」と言ってくれたのもまたよかった。影山にとって中学時代のことが非常に重たいことであるというのに共感したり、わかろうとしたりと自分に引き寄せるでもなく、「影山にとってこうである」とそのまま受け止めてくれることって優しい。曲者揃いの1年を率いていくことになる縁下がこの視点を持ってくれているというのはすごく安心するし、1度部を離れた経験、そしてまた戻ってきた経験、ベンチメンバーの思い、コートに入った時の思い、そういうあらゆる視点を持ってチームを見ている人が主将を務めるのって、大地さんとはまた違った良さがあるんじゃないかな。「詳しい事情を知らない」スガさんが、「自分が間違っている可能性があるというのを影山は分かっていて、それは中学時代チームメイトとぶつかって気付かされたことである」と、彼の中学時代の経験を今に通ずるものとして肯定してくれているのもいい。「詳しい事情を知らない」のにそう言ってくれるのがいいんだよね。影山の深いところまで踏み込まなくても、今の影山自身のこととして受け止めてくれる。縁下やスガさんのこういった価値観が影山にとって本当に救いだなと思う。

「影山がスパイカーに要求すること」1つ目として、月島の打ちやすい打点に「合わせない」こと。これもまた熱い。影山が常に打ちやすいところにトスを上げてくれることでスパイカーとしては非常に安定して打ちやすく、楽をできていたはずだと思うんだけど、これはつまり、スパイカーの思う自身の最高に、影山が合わせていたということ。でもそうではなくて、必ずしも影山がスパイカーの要求を飲むのではなく、「出来る」無理をさせることでスパイカーのポテンシャルを引き出すという展開。これが影山と月島において為されるという点も熱いし。「跳んだな」というニヤリ顔がいい。山口が月島のことになると影山相手でも若干言葉が荒れているのもかわいい。

そして日向によって行われる、影山の戴冠式。「お前の本質は王様」であるとしながら、「何がダメなの?」とまるごと肯定してくれる。日向が丸めて被せたタオルが王冠になっている、この絵がめちゃくちゃ良かった。吹っ切れた様子で微笑む影山は本当にいい表情してる。ここで思い出すのが数週前の巻頭カラー、王様の衣装に身を包んだ日向と影山のイラスト。影山に対して自己主張を続ける日向もまた王様。そしてIH予選で脱・王様した影山が、今度は、コートを独裁し言いなりにさせる「王様」ではなく、コート上の全てを統治し敬愛される「王様」として正しく肯定されるようになるというのがほんとうにすごい。まさか王様の物語がここまで続くとは。中学時代のトラウマに打ち勝つだけなく、意味のある経験としてまるっと肯定してくれるのはやさしいし、うれしい。

影山の想定するレベルが最高到達点だったこれまでに対して、相互に主張し合うことのできる環境が整ったことで、チームとしてより強く、高く飛んでいけるようになるんだろうなぁ。いい回だった!また来週が楽しみ。