ハイキュー‼︎第313話「「諦めない」って口で言う程簡単な事じゃない」

冒頭の研磨がすごい。こんなの悪役のセリフじゃん。と思うんだけど、GWから続く友達といってもいいような仲の良い関係性もまた嘘じゃなくて、その2つが両立しているというのが、何というか、こわいよね。全然わからない。「目先の新しさを求めて」にはちょっとびっくりした。これまで日向は、どんなに対応されてもあっと驚くような方法を使って対応し返して来たし、それでうまくいくことも多かった。だけど今回に限っては、そうではない。音駒は、研磨は更に上をいく。そういう状況とかも全部ひっくるめて、「目先の新しさを求めて」と皮肉のように言ってしまえるんだな(先生は研磨にそう言わせてしまえるんだな、というのもある)。



そして日向は無意識に、今の自分の状況(と研磨)を強化合宿の鍛治くんの言葉に重ね合わせる。マジか…だよ…。あの時の日向は、コートにおいて価値をなくした、コートに立つ権利をなくしたことを鍛治くんにハッキリと言葉によって叩きつけられて、今の日向は研磨にそう言われたわけでもないし現に今もコートに立っている。だけどこの2つを日向は明確に重ねている。影山がいないお前に価値を感じない、そしてそれに重ねる、攻撃・得点ができなくなっている今。日向にとって自分がコートに立つ価値の凄く大きな部分が攻撃にある、ということがよく分かる。だけど、強化合宿の時からひとつ大きく変わったことがあるとするなら、絶対に「レシーブへの目覚め」がそう。レシーブの大切さや面白さや気持ち良さを知っている今、それが何かきっかけになればいいな…





そしてやっぱりスガさんに救われる。彼は思っている以上に色んなものが(例えばいま日向が1人思っていることがあるだろうこととかも)見えている子だと思うけど、こんなふうに明るく自然にチームの雰囲気を底上げしてくれる、そういう子って、実はそんなにいないんじゃないかなと思う。どんな苦境でもへこたれない、人間離れした強さもすごい、だけど、常に優しく明るく自然体で、周りを見ていてくれてこんな風に声をかけてくれる強さもまたすごい。3年生がこれを言ってくれるというのもすごく大きいよね。そしてスガさんを「ヤベェ奴」と分かってる黒尾も良いなー。



「今こそ俺達が日向に道を作れ」。4月の時点ではきっとそうではなくて、他のメンバーに支えられて日向はバレーボールを始められたし、コートに立てていた。そしてそのうちに日向の「囮」としてのパワーというのが、烏野の中で確立されたものになり、日向は烏野のコンセプトを支える存在になっていった(勿論それは日向だけではないけど、常に烏野のコンセプトを実現するための「囮」という存在の大きさはやっぱりすごい)。それを烏野の皆が分かっていて、「日向に道を作ってもらってきた」と表現される。まるで最終章みたいな熱さ。ただ、そこで終わらないのが面白くて、今の日向が「道を作ってもらって」コートに立つことに意味があるのか、ということ。「影山のいないお前に価値を感じない」と言われたあの時の体験と、今の自分とを重ねている以上、日向は「烏野の皆がいる今は俺に価値はある」ではなくて、「影山や烏野の皆がいなくても俺に価値はある」と言い切れなきゃいけない。



「戦略的ワンポイントチューセッター」にあかねが驚いているのが少し新鮮!そして「助走距離確保」が1つ仕掛けになっているのが面白い。音駒に狙われ牽制されて十分な助走距離を確保できず、攻撃に参加できない、という状況の中で、「助走距離確保」の文字が目に入ると、やっぱり「来る!」と思うもん。しかしそれでも日向の攻撃には繋がらない。だねど日向が、「レシーブを選ばない」ことをしなかったことは、本当に大きなことだと思った。4月、スパイク打ちたい打ちたいってそればっかりだった日向が、今、あの強化合宿を1つの大きなきっかけとして、「レシーブが無きゃスパイクも無い」にたどり着いている。日向はコートに立つ価値があると主張し続けなければならない、そして今現在日向にとって、もっともそれを知らしめることができるのはきっとスパイクだと思う。コートに立つ価値がないと言葉で叩きつけられた強化合宿に、一瞬だけ今を重ねて、それでも尚、スパイクに焦るわけにはいかない。近道はなく、レシーブを捨てた先にスパイクはないから。だから「どっちか」という選択肢はないんだよね。レシーブが上がった先でスパイクを打つ、というそれしかない。



未だ日向はスパイクを打てない。だけど状況は悪いばかりじゃない、リエーフの「打ってくるんじゃ?」こそがそう。



まさかの「不運」にヒュッと肝が冷え、なんで今だよ、まじかよ、って苦しくなった。だけど日向はちゃんっっと大丈夫。一度興味を失いかけた研磨がまた日向を見ている。まだ終わりじゃねえぞ、こんなんじゃねえぞ!って日向が研磨に叩きつけてくれる時が来るのが楽しみ、と期待できる流れになってきたことがほんとうに嬉しい。



諦めないって口で言う程簡単じゃないけど、日向の「諦めない」力は本物。第1話で影山がこの言葉を投げかけた時の日向は、人数も揃わず基礎的な練習すら満足にできない環境で「とぶこと」1つだけ武器に持って、「次もコートに立つ権利」を欲していた。間違いなくここが原点であると同時に、日向はこの時の日向のままではない。313話の積み重ねを経て、「とぶこと」は今も日向のもっとも大きな武器だけど、それだけではなく、「ボールが落ちたらバレーボールは始まらない」にたどり着いた。日向の「コートに立つ価値」の大部分を占めるのは今も「とぶこと」かもしれないけど、今の日向はとばせてもらえるのを待つんじゃない。レシーブがあって初めて、とべるのだということを知っていて、だから絶対にそれを捨てない。



苦しい話が続いたけど、光が見えてきた。つぎは2週ぶりのジャンプ!