ハイキュー‼︎第310話「鳥籠」

「鳥籠」、タイトルであぁ今週やばいなって分かるからすごい。誰が誰の手によって鳥籠に捕らわれることになるのか、分かるじゃん。すごい。

 

西谷はだんだん何かに気づいてるね。烏野の攻撃はやはり決まりきらない…けれども、研磨を走らせてることには意味があると思うし思いたい。天童は烏野の強さや厄介さを身をもって知っているけれどもそれをはっきり褒めたたえるということはなかなかしないし、例えば若利くんが日向や影山に何か思ったような、今後も抱き続けるであろう個人的で特別な思いや感情っていうのもきっとあまりない。五色のように、あの試合から合宿を経て抱き始めた独特の連帯感だとか、もちろんライバルとしての思いだとか、そういうのも天童には少し違うように思える。つまり何というか、天童は烏野のことを応援したりとか絶対にしないと思うんだけど、だからこそ、多少の乱れは烏野にはカンケーねーの、って言葉がうれしいんだよね。希望や願望や期待ではなくて、烏野とネットを挟んで戦ったというその経験のみがこの発言の裏付けとなっているということが、何より客観的に見たときの烏野の強さを表していて、勝手に誇らしい気持ちになる。

 

 

が、その天童も固まる。カンケーねーとばかりに決まるかと思えた烏野の攻撃は、音駒の3枚の壁によって阻まれる。「多分頃合いだから」翔陽にコミット、という指示、ゲスブロックと確実に違うのはもちろん分かるんだけど、その違いの決め手はどこにあるんだ…?と少し考え込んでしまった。「音駒の一貫した戦略」に則った読み、という点なのだろうか。予想される結果が発生する状況を「次烏野が攻撃する時翔陽が~」と限定した上で、予想される結果が発生するという根拠と、その結果に持っていくための自分たちの戦略、が揃っているからこそ、なのかな。辞書的な意味は分かっても、見てると結構考え込んでしまって難しい。

 

 

そして、研磨の供述から西谷の謎解きへとつながっていく流れがま~~~~気持ちいい。スポーツ漫画を読んでいてこんな感覚に出会うとは思わなくて、とにかく気持ちいいんだ~~。烏野は「全部日向狙いってワケじゃない」という前提のもと、「日向に来たら西谷が」という対処を取った。烏野がこういった対処を取るに至る経緯っていうのも、コーチの指示を聞くだけではなく初めて選手だけでミーティングを完成させるという成長を感じさせるシーンでもあったんだよね。それだけにまた、キツイ。更には、日向にレシーブを取らせてくる音駒に対して日向がブロードを仕掛けたプレーっていうのも、烏野が音駒の策を凌駕していくような気持ちよさがやはりあった。音駒の思う通りになるばかりじゃないぞ、というような。しかし本当のところはというと、やはり音駒はどこまでも上手いチームであり、どこまでも考えていた。まず、日向をサーブで狙う。それが対策されれば、今度はレシーバーをコントロールし、日向の助走路を断つ。「日向の得点を削る」という目的に対して、あらゆるアプローチを常にあらゆる角度から準備し取り組んできているというのが、とにかくすごい。またその作戦をチームの構成員が必ずしも理解していなくても、共有されていなくても、しっかり統制が取れているということもまたすごい。

 

 

そしてまたこの作戦を主導する研磨という子は、確実にほかの子たちとは違うバレーや部活との向き合い方をしている子なんだけども、「ジャンプの高さに重要なのは助走である」「セッターならスパイカーのミスをそのままにしたくない」というような「定石」であったり、技術に関する正しい知識をしっかり分かっていて、そのトリッキーな作戦の根拠の一つとして挙げているということもまたたまらない。「いいジャンプはいい助走から」「助走こそ人工の翼」というようなことはこの作品の中でも繰り返し語られてきて、日向を鼓舞する言葉として確実にあったものだと思う。「助走は翔陽の翼だね」。助走路が断たれた今、その言葉は日向にとって何の励ましにもならないどころか、あまりに残酷なものへと変わってしまう。変えてしまう、研磨が。それはもう最後のコマ、鳥籠の中に日向を囲う研磨の恐ろしさが何より物語っていて、ユニホームを着ているのがミスマッチに思えるほど。

 

「点だけじゃなくて~」の表現のうまさも凄まじい。音駒に狙われた日向に焦点を当ててみても、音駒の戦い方というのを見ても、試合におけるプレーの連なりという意味でも、「点だけではなく線」という表現がバッチリはまる。そこから日向の「動線」助走路、日向の進む道、と広がっていくのもすごい。おもしろすぎる。

 

 

とにかく今週すごかった。研磨の本当の恐ろしさを見たし、話運びの上手さが凄まじい。恐ろしいし気持ち悪いのに気持ちよくて不思議な感覚。捕らわれたままの日向じゃないという信頼も確実にあって、日向がこの状況を打開していくのが見られるのがまた楽しみなんだけど、どう打開していくのか本当に予想がつかない。烏野はもう後がない。第2セットも半ばを過ぎたところ。どうなるんかな~!