ハイキュー‼︎第281話「ハーケン」

表紙&巻頭カラー!今回のジャンプ表紙がめちゃくちゃいい。やっちゃんのポスターの構図だよね。いつもの体育館だけど着てるのはユニホームっていう実際には起こり得ない状態で、「この空により高く、より長く翔ぶ」っていう煽り文がまたいい。本編を読むと更にぐっとくる。「より長く翔ぶ」っていう言葉から思い出すのが「相手が強くても弱くても、結果は勝つか負けるかのどっちかで、負けたらもうコートには立てない」「コートに残るのは勝った奴、強い奴だけだ」っていう日向と影山の言葉。2013年1月6日、3年生がユニホームを着てバレーボールをしてるのは全国で30チームほどしか残ってなくて、今日の終わりにはそれがまた更に半分になって、そうやって勝った奴だけがコートに残っていく、っていうただただシンプルで当たり前のことにすごく胸がぎゅっとなる。


巻頭カラー。双子速攻マイナステンポ・裏の成功に興奮した面持ちの双子と対照的な烏野メンバーの表情。どう考えてもヤバイ攻撃がちゃんと決まったのに、侑が「低くて短かったな!」と発言してるのが侑っぽいし、ハイキューっぽいし、古舘先生っぽい。「俺セッターちゃいますけど!」の語感が好きすぎる。


烏野のカラーは、150話の同じ冬の帰り道のカラーを思い出す。あの頃は3周年で、白鳥沢戦開幕のあたり。2年経ち、130話進んだけど「同じ冬」なんだよねー。みんなほとんど同じコート、同じマフラー、同じカバン。高校生っぽい。今回のカラーでは雪も降って更に寒い時期になってて、月島だけコートが変わってる。西谷も耳あてしてるし。日向のカバンに、コーチに教わった「コンビニでも買えるプロテイン」が入ってるのにぐっときてしまった。素直な子なんだよね、他人にも自分にも。それでいてめちゃくちゃ頑固なんだろうとも思うけど。あと影山がカレーまんをくわえている表情に、普通の16歳の人間の男の子だった…って妙に安心する。


今年の春高ポスターは西谷。最近の本編の熱さもあってめちゃくちゃエモい。


双子の攻撃に動揺の烏野コート。ネットを隔てて向こうでは双子が「スカイラブハリケーン」の下をどちらがやるかという話題で揉め、アランくんが心の中で突っ込むという平和ぶり。こういう温度差の演出が好き。そして動揺した烏野が、現在稲荷崎にある「イイ流れ」を取り返すために考えるであろう「持って行き方」を侑の独白によって淡々と進めていくのがまた、明らかに稲荷崎に勢いがあって、また一枚上手でもあるっていうことを何より示してる。侑の考えの通り烏野は「ここ一本ほしい」場面をエースに託し、そして阻まれる。が、タッチネットで得点は烏野。それでも完全に流れと勢いは稲荷崎。


そして烏野は日向前衛のチャンス。金田一の「何かやれ」がかわいい。そしてそう期待してしまうこともめちゃくちゃ分かる。ここがまた今週のラストにかかっていくんだよね〜。再びインナースパイクを狙った田中はまたも大耳に阻まれ、フェイント(というのかな?)でブロックの上からふわっと稲荷崎コートに入れたボールはリベロに拾われアランくんがブロックアウトで得点。影山を呼ぶ田中、まだ何かありそう。


影山サーブからの、侑のツーを月島と影山が読み、日向と旭さんもブロックに跳ぶ、ところで侑がセットアップの動きをしたために、烏野ブロックオーバーネットで稲荷崎に得点。研磨と影山は「オーバーネットを誘ったな」と気付いてる。研磨のいやそ〜〜な顔がめちゃくちゃいい。今週はこういう「アウト」の内容も充実していて既に面白い。TVでたまに国際試合を見てると、こういうアウトって意外とよくあるよね。


そして侑、ジャンプサーブ。大地さんが上げた(というより、腕に当たった)ボールはギリギリ稲荷崎コートへ。またも、得点は烏野ながら喜べない1点。点としてはエースの決める1点もラッキーの1点も平等なものだけど、こういう時のは確実に次はない1点。そして日向は際立った活躍のないまま後衛へ。「後衛」に「退場」とルビが振られているのがポイントっぽい。「10番後衛に回したったで!」とかも、今までなら、日向が相手に恐れられていることの証明であって、更に日向の後衛=月島の前衛なので、攻撃に長けたローテではないものの月島のブロックでの活躍が期待できるローテだぞ、って流れになっていたんだけど、今週はちょっと違うんだよね。


侑のトスをしっかり見て銀島に跳んでブロック、稲荷崎コートに返ったボールを赤木が上げる…かと思いきや、またも侑がファーストタッチそのままセットで治へ。ムチャツム、と言いながらもしっかり入ってきている治。それでも「キレキレ」な月島はしっかり治へブロック着けた、ところで今度は治が自分に上げられたトスを再びセット、アランくんのバックアタックが決まった、と誰もが思ったところで、日向。


も〜この流れがあまりにも凄すぎて。まず双子のビックリプレー。作中一の飛び道具使いが日向であり烏野だと思って今まで読んで来て、ここに来てこんなビックリプレーが相手校のプレーとして描かれるか、という驚きと興奮と、当然ながらこれをやってしまえるポテンシャルの高さもすごくて。更には侑→治のトスにしっかりついていった月島のレベルの高さ(今回は多分それが裏目に出た)と、ビックリプレーの連続の中で治のトスにしっかり入っていったアランくんの凄さと、それに対してブロックに着けた大地さんがある程度コースを絞れたのがやっぱりあったのかなっていうのと。とにかくもう、先週からの圧倒的稲荷崎の流れがめちゃくちゃ苦しいのにすっごい気持ちよくて、この感覚があまりにも好きで、特にこの場面は稲荷崎にとっては双子のビックリプレーからのエースの一発っていう、これ以上ないくらいにチームの色が出た最高の流れで、これが決まってたら本当にやばかったなっていうのが想像できる。のだけど、アランくんのスパイクが決まったと誰もが思ったその瞬間、二本の腕が綺麗にボールを上げ、体勢を崩して後ろに倒れる様子がコマ送りで描かれる。日向。自宅や体育館、職員室、視聴覚室、いろんな場所で烏野の試合を見る宮城の子たちや、コートの中、ベンチにいる烏野の子たちは時が止まったみたいな表情をして日向を、雲雀田監督は上がったボールを見つめてる。この雲雀田監督の独白を読み進めているうちにじわじわと熱い気持ちが胸に押し寄せてきて、影山の「ナイスレシーブ」からの「カウンタァァァ」で完全にそれが解放される、みたいな流れがもうめっちゃくちゃ気持ちいい!なんだよこれほんと…最高かよ。


金田一の「何かやれ」とか「10番後衛」とか全部振りで、強化合宿で見たもの特訓したこと、更には1巻時点での日向のレシーブとか、その時既に描かれてた「レシーブはそう簡単に上達しない」上に「レシーブとトスがあっての攻撃」ということとか、そういうのが全部このラスト6pに収束されていくのが最高すぎる。ここでアランくんという「5本の指」相手に、「普通のレシーブ」を成功させたということが日向の今後のバレー人生において足掛かりとなるような一本になるっていう説得力がすごい。身体能力や反射神経に支えられたスーパーレシーブや、スパイダーマンみたいな繋ぎ方じゃなくて(それももちろんすごい)、普通のレシーブを綺麗に決めた、っていうのが連載5年の281話にしてこんな熱いシーンになってるっていうのがすごすぎる。アンダーレシーブって1番基本で1番スタンダードなプレーだと思うけど日向にとってはそうじゃなくて、1番突飛な速攻をアイデンティティとしてコートに立っていたところから、みんなが通ってきた順路を凄い勢いで逆走して「スタンダード」を獲得しているようなところを最近の日向には感じていて、からの、今回ついにその基本中の基本のレシーブのスタンダードを獲得する、っていう。


今まで大勢の選手を見てきた雲雀田監督が、この一本が日向にとって足掛かりとなる一本だというように独白していることも、日向がこれから上に上にのぼっていく子だってわざわざ言うまでもなく考えてくれていることもぐっと来て。話のベクトルは違うんだけど、今回雲雀田監督の独白を読んで思い出したのが木兎さんの「その瞬間」の話で、木兎さんのは高校生の「今」やる理由は?どうしてやるのか?ってことを、「将来」なんて一先ずどうでもいいとしながら、同じく高校生の「今」バレーをやっている木兎さんが個人的体験を元に話したことなんだけど、監督の話って、その木兎さんが「一先ずどうでもいい」とさておいた「将来」の話なんだよね。今バレーをやっている大勢の高校生の中で、その中の一部の子たちのいわゆる「将来」である、高校の更に先の未来におけるバレーの話。当たり前のことだけど、木兎さんだって「将来」勝てるかどうか、或いはバレーを続けていくか続けていけるか、そういうことは知る由もないし成功も失敗も約束されていない、だけど「今」バレーをやるのは「その瞬間」があったから、っていう、どこまでも「今」の話をしてる。それが月島に響いたっていうのが今改めてすごく分かるなと思った。


影山は西谷に言うのと同じ淡々とした調子で「ナイスレシーブ」と言う。そこに特別驚きや興奮が見えないことこそが、影山のこの日向のディグへのこれ以上ない賞賛だよね。だけど「お前にこれをいう日が来るとは」という独白には影山が見てきた日向の過程が滲んでる。ほんっとにこれ熱すぎる!ボールを受けた腕に伝わる痛みと、影山の「ただの」ナイスレシーブ、という言葉と、この一本に思い起こされる「あの」5日間と、中学からの4年間、そういうものが全部じん、と日向に実感を起こさせる様子がもうたまらない。侑がアランくんの得点を確信して見せた笑顔から、歯を食いしばった死ぬほど悔しそうな表情に変わるのがまたいい!侑にこんな表情をさせた日向がなんだか勝手に誇らしいし、こんな風に悔しさを隠そうともしない侑がまたいい!


「思い出すだけで心が奮い立つような一本」はきっと今烏野のここ1番のチャンスの一本。絶対決める。来週が楽しみすぎる。ここ2ヶ月くらいハイキューの濃さがちょっとすごすぎるけど、今週は一際。本当にいいもの読んだ。今まで読んできてよかったと思える最高の1話でした!面白かったー!!!!