ハイキュー!!第262話「いつだって前のめり」

田中入部時の回想からスタート。当時2年の3年生にとっては「部活体験に来てたパツ金」。田中はかつての強豪「烏野」に憧れて、というよりは「強いところでやりたい」となったときに学力を考慮に入れたとき最も適当だったのが烏野という感じ。「西光台のアズマネ」とか「あのニシノヤ」とか、県内のバレー少年に名が轟いている感じがちょっとリアル。馴染みのないものへのカタカナ呼びが「旭さん」「ノヤっさん」とかって変化していく過程を考えるとなんだかいいよね。3年生が、かつての強豪としての名がまだ記憶に新しい烏野に夢見て入部してきて、しかし現実は厳しく体育館は使えないし直近の練習試合も断られる。そんな現実の中で、足を蔦に取られそうになるような恐怖を振り払ってただひたすら前を向いて、高校生の彼らが自分たちの力でできることは全部、どんなに小さなことでも頑張ってやってきて、それでもなお、当時の田中から見れば「現実って地味だ」「何か緩ィな」。そして田中の先輩への視線が変わるきっかけというのが、練習試合の後「期待外れ」と揶揄する他校の選手について3年生が交わしたやりとり。「堕ちた強豪飛べない烏」と揶揄されたことについて、3年生3人は「ハハハ」と笑い合いながらも、目だけは笑ってない。ここ本当にゾクッとした。そして大地さんが「勝てばいいよ」と言う。いやもうここのシーンがたまらなく好き。一見何でもないことのように、気にしてさえいないように思える反応を見せながら、その内実の3人の本心というのが見える。3人はどんなに口で反抗しようと覆せない事実が見えているし、勝つことでしか証明できないということも、勝てば認める他ないということも分かっている。そして外から寄せられる言葉への苛立ちや悔しさを全て練習にぶつけて、そうして見返してやるんだという自信というより確信のような、そういう強い思いが見える。田中と3年生の関係性ってやはり特別だし、今までは「田中が年上への敬意をしっかり持っている」「田中だけが唯一部を離れたことがない」からこその関係性だと思っていたんだけど、当初尖っていた田中が3年生に抱く強い思いっていうのが今回これ以上ないくらい根拠を持たせて描かれたのがよかったなぁ。田中はある意味でフェアだし、熱い子なんだよね、やっぱり。そして「気合を入れ直して」坊主にしてくる、スガさんがいの一番に触らして!!と寄ってくるっていうのがもうかわいらしいし。3年生が田中をかわいがってることも、田中が先輩を慕うことも、すごくわかるなと思った。

 

そしてそんな田中の回想が明け、烏野はあと1点でセットが取れるというところ。ちょっと今回は珍しい空気。モブの「このセット取れなきゃこの後が厳しい」にはドキリ。そうなんだよね。烏野は飛び道具をどんどん投げて手の内をさらしまくってるのに対して稲荷崎はまだ何も消費してない感じ。旭さんのサーブはリベロに拾われ、綺麗に攻撃に繋げられる…かと思いきやトスが少し乱れ、治のフォローによってなんとか烏野コートへ。稲荷崎の上手いMB角名は、月島も「速っ」と言ってるけど、しっかりリードなのにブロックに移動するのがちゃんと速い。「ブロックの完成が早くなってる」のあたりからも、稲荷崎の余裕のある感じとか烏野はここ取らなきゃやばい、っていうのが如実に伝わってくる。ブロックに阻まれた田中のスパイクを西谷がなんとか上げて返す。月島もしっかりブロック反応するんだけど「確かにコートを塞いだのに」抜かれる。これはどういうことなんだろう。コースを塞いでストレートに打つよう誘導したのに、そのストレートも上げ切らないというようなことだろうか。この月島のモノローグからは稲荷崎に化かされてる感が感じられていい。もう一度上がってきたトスに、「俺は今日何をした」と自分の今日のプレーを回想し、そして3年生の姿を思い浮かべる。めちゃくちゃ勝ちフラグ。に思えるのに、「やばい、田中、待て」ってこっちも焦ってくるのは、ハイキューではそう簡単には上手くいかせてもらえないって経験的に知ってるから。そしてコーチの言葉がまた不安を煽る。いろんな思いを込めた田中のスパイクはアウト。宮兄弟のやりとりとか「ラッキー」って言葉が更にむごい。「こっちも乱れたけどあっちが勝手に自滅した、ラッキー」みたいな。で、ここで田中が、なんとも言えない、今まで見たことのないような表情を見せる。それを解説するのが梟谷の2人。このための梟谷2人の解説役へのキャスティングだったんだなー。赤葦の言うとおり、田中は今日ミスばっかりしてるわけじゃないんだよね。それでもどうしても決めきれなかったり、今までできていたことが途端にうまくいかなくなってる。「全部だめだって気分になる」という木兎さんの言葉がまた、いや~な説得力がある。それにしても木兎さんのこの言葉がまた重くて、普段明るく天真爛漫な彼の、深い部分が読み取れる。表情が見えてないのもまたねー。赤葦は木兎さんに非常に共感的に、十分理解してやってくれていると思うけど、それでもこの「全部だめだって気分になる」という言葉にはどう思うんだろうね。コートの中で1人ぼっちになったみたいに、全部を否定してしまうようなことを思うときがあるのか、っていう。

 

来週どうかなぁ。田中の活躍って意味でもそうだし、試合としてもここ取らなきゃちょっとやばいっていうのが押されてるんで、緊張感がすごい。どうなるかなぁ。